ID番号 | : | 06135 |
事件名 | : | 地位保全金員支払仮処分命令申立事件 |
いわゆる事件名 | : | フレックス事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 営業活動・勤務態度が不良であること等を理由とする懲戒解雇が無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務能力 |
裁判年月日 | : | 1993年3月29日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成4年 (ヨ) 2986 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 労経速報1499号22頁/労働判例636号61頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務能力〕 1 債務者は、債権者の平成三年度の営業成績が別紙営業売上のとおりであり、これによると、外注比率が高く、営業収益が上がっていないうえ、全部または一部について債務者の技術者を使用した案件であっても、すべて赤字であるから、債権者が適切な営業活動をしていたとはいえないと主張する。 しかし、平成三年度の営業成績が結果的に右のとおりであったとしても、もともと赤字を計上することを予想して請け負った案件もあり(書証略)、債権者が必ずしも適切な営業活動をしていなかったとはいえないので、右の営業成績をもって、直ちに就業規則五三条二項所定の懲戒解雇事由に該当するということはできない。 2 債務者は、週一回開催される営業会議において、営業担当者が報告書を提出して営業報告をしているが、債権者は、報告書を提出することが極めて少なく、報告書を提出しても、事後報告がほとんどで、営業過程における経過報告やタイムリーな報告をすることはなかったと主張するが、疎明資料として提出されている債権者の報告書に照らすと、右主張は理由がなく、債権者の営業報告をもって、就業規則五三条二項所定の懲戒解雇事由に該当するということはできない。 3 債務者は、債権者が出勤・退社時に義務付けられているタイムカードの打刻をせず、また勤務時間中に他の多くの従業員がいる前でおおっぴらに爪を切るなど、社内風紀上好ましくない執務態度が再三あり、これを何度注意しても改める様子がなかったと主張する。 本件疎明資料によると、債権者は、入社後しばらくしてタイムカードを打刻しなくなったことが認められるものの、その点について、債務者が債権者に対し注意指導したとは認められない。また本件疎明資料によると、債権者が勤務時間中に爪を切ったことは認められるものの、頻繁にあったとは認められない。従って、右の事情をもって、就業規則五三条二項所定の懲戒解雇事由に該当するということもできない。 四 本件解雇の了解について 債務者は、債権者が、本件解雇に伴う退職金の支給について、自己の振込先を積極的に債務者に告げ、また本件解雇を前提とする雇用保険関係の手続きを行うために印鑑を債務者に預けるなどし、本件解雇を了解していたと主張するが、本件疎明資料(書証略)によると、債権者は、本件解雇を通告された平成四年七月三一日以降、解雇予告通知書の受領を拒否するなど、本件解雇を争う態度を示していたと認められ、債務者が主張するような事実があったとしても、それをもって、債権者が本件解雇を了解していたということはできないので、債務者の右主張は採用しない。 五 本件疎明資料(書証略)によると、債権者は、平成四年一月一三日ころ、A社長に対し、平成三年度の昇給分の支払いを要求し、その結果平成三年四月に遡って支給されることになり、平成四年二月分において精算されたこと、A社長は、債権者に対し、平成四年初めころ、債権者の勤務態度が悪く、十分な営業活動をしていなかったと主張して、営業を辞めて、技術者に戻るかと問い正したところ、債権者は、営業を続けたい意向を示したこと、またBは、平成四年四月八日、債権者に対し、辞職を持ちかけたが、債権者はこれを拒否し、A社長との話合いを求めたこと、A社長及びBは、同年四月一四日、債権者に対し、辞職を求めたこと、さらに同年四月には他の従業員に昇給があったが、債権者については昇給が行われなかったことが認められ、A社長やBは、遅くとも平成四年四月当時債権者を辞職させる意図をもっていたというべきである。そして、これまでに検討した事情に照らすと、債務者は、債権者を排除するため、C会社やD会社の案件で生じたトラブル等の責任を債権者に負わせ、本件解雇をなした可能性が高いというべきである。 |