ID番号 | : | 06146 |
事件名 | : | 賃金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 大映映像他六社事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | エキストラ派遣会社からエキストラとして派遣されていた者が、右派遣会社の倒産にともない派遣先会社との間に雇用契約が成立していたとして賃金を請求した場合につき、エキストラと派遣先会社との間には黙示の雇用契約は成立していないとして棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働者派遣事業の適正運営確保及び派遣労働者の就業条件整備法4条 職業安定法44条 労働基準法24条1項 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 使用者 / 派遣先会社 |
裁判年月日 | : | 1993年5月31日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和63年 (ワ) 14668 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | タイムズ828号213頁/労経速報1498号26頁/労働判例630号77頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 新谷眞人・季刊労働法171号160~166頁1994年7月 |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-使用者-派遣先会社〕 二 そこで考えるに、原告と被告らとの間に雇用契約が成立したといえるためには、原告と被告らとの間に、単に事実上の使用従属関係があるというだけでなく、雇用条件決定の経緯、指揮命令関係の有無・内容、労務管理の有無・程度、賃金の支払い方法等諸般の事情に照して、原告が被告らの指揮命令のもとに被告らに労務を供給する意思を有し、これに対し、被告らがその対価として原告に賃金を支払う意思を有するものと推認され、社会通念上、両者間で雇用契約を締結する旨の意思表示の合致があったと評価できるに足りる事情があることが必要である。 1 前記認定の事実によると、原告は、撮影場所においてエキストラとして出演中は被告らの助監督・アシスタントディレクターの指示・指導に基づきエキストラとして演技していたのであるから、原告と被告らとの間にその限度で事実上の使用従属関係があったことは否定できないが、原告は、A会社との間で出演時期・場所、出演料等の出演条件を合意したときは、専らA会社から指示を受けて出演場所に集合し、出演場所に待機しているA会社の担当者から集合点呼、移動・休憩・食事・解散の指示を受けており、出演後にA会社に対し出演料を請求し、A会社からその支払いを受けていたものであって、無断不出演についてはA会社から制裁を受けることになっていて、被告らとの間で出演条件の内容を話し合ったこともないのであり、他方、被告らは、エキストラの確保をA会社に依頼し、その対価をA会社に一括して支払ってきたが、エキストラとしての原告がA会社から受領する出演料の決定に関与しておらず、また、撮影場所に集合したエキストラに対し面接してその採否を決めたり、住所氏名を確認したりすることはなく、特定の個人に着目してエキストラとしての出演を求めているわけではなかったものということができる。 このような事情のもとにおいては、A会社から支払われる原告の出演料が賃金に当たるとしても、被告らは、原告の賃金その他の雇用条件を決定しておらず、原告に対し労務提供につき全般的な指揮命令、労務管理をしていたということもできず、また、賃金の支払いに関与していたともいえないのであるから、原告が被告らの助監督・アシスタントディレクターの指示・指導に基づきエキストラとして演技していた事実があるからといって、これを根拠に原告と被告らとの間に雇用契約が黙示に成立したということは困難であるというほかない。 |