全 情 報

ID番号 06149
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 国鉄鹿児島自動車営業所事件
争点
事案概要  管理職に準ずる地位にある職員に対し、組合員バッジのとり外しを命じたが従わなかったため、点呼執行業務からはずして営業所構内の火山灰除去作業に従事させたことにつき、命令をした上司に対する損害賠償請求をしたが、業務命令には違法性は認められないとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法709条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 業務命令
裁判年月日 1993年6月11日
裁判所名 最高二小
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (オ) 1631 
裁判結果 破棄自判
出典 時報1466号151頁/タイムズ825号125頁/労経速報1502号3頁/労働判例632号10頁
審級関係 控訴審/05293/福岡高宮崎支/平 1. 9.18/昭和63年(ネ)102号
評釈論文 吉田肇・平成5年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊852〕320~321頁1994年9月/三井正信・労働判例百選<第6版>〔別冊ジュリスト134〕34~35頁1995年5月/山本圭子・日本労働法学会誌83号178~186頁1994年5月/西村健一郎・民商法雑誌112巻1号108~114頁1995年4月/大沼邦博・法律時報66巻9号102~105頁1994年8月/土田道夫・平成5年度重要判例解説〔ジュリスト臨時増刊1046〕235~237頁1994年6月/藤内和公・岡山大学法学会雑誌45巻2号183~
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-業務命令〕
 前記の事実関係からすると、降灰除去作業は、鹿児島営業所の職場環境を整備して、労務の円滑化、効率化を図るために必要な作業であり、また、その作業内容、作業方法等からしても、社会通念上相当な程度を超える過酷な業務に当たるものともいえず、これが被上告人の労働契約上の義務の範囲内に含まれるものであることは、原判決も判示するとおりである。しかも、本件各業務命令は、被上告人が、上告人Xの取外し命令を無視して、本件バッジを着用したまま点呼執行業務に就くという違反行為を行おうとしたことから、自動車部からの指示に従って被上告人をその本来の業務から外すこととし、職場規律維持の上で支障が少ないものと考えられる屋外作業である降灰除去作業に従事させることとしたものであり、職場管理上やむを得ない措置ということができ、これが殊更に被上告人に対して不利益を課するという違法、不当な目的でされたものであるとは認められない。なお、上告人ら管理職が被上告人による作業の状況を監視し、勤務中の他の職員が被上告人に清涼飲料水を渡そうとするのを制止した等の行為も、その管理職としての職責等からして、特に違法あるいは不当視すべきものとも考えられない。そうすると、本件各業務命令を違法なものとすることは、到底困難なものといわなければならない。