全 情 報

ID番号 06154
事件名 雇用関係不存在確認請求/賃金請求事件
いわゆる事件名 松蔭学園事件
争点
事案概要  生徒の成績評価の誤りを理由とする高校教諭に対する解雇につき、職務の適格性を欠くほどの誤りはなく右解雇は無効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 職務能力・技量
裁判年月日 1993年6月23日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和57年 (ワ) 1492 
昭和59年 (ワ) 12601 
裁判結果 一部認容・却下
出典 時報1473号137頁/タイムズ840号114頁/労働判例632号23頁
審級関係
評釈論文 大橋範雄・判例評論424〔判例時報1488〕226~230頁1994年6月1日
判決理由 〔解雇-解雇事由-職務能力・技量〕
 (三) 右各事実からすると、被告が昭和五六年度一学期の成績表を作成した昭和五六年七月頃は、組合と学園との対立関係が今まで以上に激化し、組合委員長として中心的に活動している被告に対して不必要な差別扱いをし、ことに頭髪違反問題をめぐる学園の不当に厳しい対応により、被告は相当に苦慮困惑し、これが被告の本来の職務遂行に影響を与えていたであろうことは容易に窺われる。
 3 また、本件ミスのうち、昭和五六年度一学期分の一一件は、既に、前記懲戒停職処分の時点で学園側に発覚しており、頭髪違反問題における被告の副校長の命令に対する不服従等と共に処分の理由とされていたものであることからすると、学園自身、これらのミスがあることをもって、被告に教師としての職務の適格性に欠けるとは判断していなかったものと認めるのが相当である。そして、その後発覚した昭和五四年度、五五年度の合計七件のミスと共に、右処分の対象となったミスを職務の適格性の判断の資料として斟酌すること自体は、二重処分に該当するということはできないが、その後発覚したミスはその内容に格別重大な事情が付加されたものとは認めがたく、したがって、これらのミスが新たに判明したからといって、その判断に質的な変化が生ずるとは考えがたい。このことは、その後に提出された二冊の被告の教務手帳を再調査したAが、当時このことが解雇の理由になるとは考えていなかった旨供述していることからも裏付けられる。
 4 以上の諸事実を総合して判断すれば、被告の本件ミスは、これが生徒に及ぼす影響等からすれば、軽微な誤りであるといえないことは明らかではあるが、それが被告の能力、素質、性格に基づくものであって矯正が容易でないものであるとは到底認められず、したがって、本件ミスによって、被告に教師としての職務の適格性が欠けていたとまではいえない。