ID番号 | : | 06183 |
事件名 | : | 地位保全金員仮払仮処分申立事件 |
いわゆる事件名 | : | メガネの田中チェーン事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 従業員としての地位を保有したまま取締役に就任していた者および関連会社の従業員としての地位を保有したまま取締役に就任していた者について、就業規則の適用があり、会社の経営を危うくするような行為を理由とする就業規則に基づく懲戒解雇および諭旨解雇が有効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 就業規則(民事) / 就業規則の適用対象者 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務妨害 |
裁判年月日 | : | 1993年5月17日 |
裁判所名 | : | 広島地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和61年 (ヨ) 155 |
裁判結果 | : | 却下(確定) |
出典 | : | 労働民例集44巻3号445頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔就業規則-就業規則の適用対象者〕 A会社就業規定二条は、その適用対象者として、「この規則で従業員とは、取締役及び顧問等を除き、第三章に定める手続きにより採用され継続して会社に勤務する者をいい、……」と規定しているが、この規定は、債権者B及び同Cのように、従業員としての地位を保有したまま取締役に就任していた者については、その取締役在任中にした行為であっても、従業員としての行為の性質をも併有するものというべきであるから、懲戒処分の対象とすることを妨げるものではないものと解される。 なお、債権者Cは、本件懲戒処分を受けた当時においては、債務者会社の従業員であったけれども、本件懲戒処分の対象とされた行為の当時は、D商事の従業員の身分を保有したまま債務者会社の取締役の地位にあったものである。しかし、Eグループ三社の前記のような相互に関連する企業形態、従業員としての地位の相互通算性、就業規則の共通性に加え、同債権者が、当時、債務者会社の従業員の採用教育担当の責任者であったことを総合すると、懲戒事由の有無の判断に関しては、同債権者は、当該行為当時においても、債務者会社の従業員と同視されることを拒みえないものというべきである。 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務妨害〕 債権者らは、以上の該当行為について、行為自体ないしその趣旨を否認しているが、これらの事実は、さきに摘示したとおり、前掲各証拠に含まれる他の複数の従業員の一致した、しかも具体的な内容の供述に照らして、優に疎明されているものと判断される。 そして、このような各該当行為、とりわけ、会社の経営自体を危うくする行為として指摘した前記2、3の各行為は、前記の前後の事実関係に照らして、債権者らが事前に十分に意を通じた上で実行に及んだ計画的なものと判断されること、債権者らが、前記のとおり、それぞれ、多数の部下を擁する本部、本店の幹部あるいは地域の多数の店舗を統括するグループ長等といった、いずれも極めて重要な職責を有する幹部従業員であり、しかも、これらの行為がその重要な職責を濫用して行われたということを考慮に入れると、これらは、極めて悪質なものといわなければならない。そして、前記4の各行為も、対外的に会社の信用を害すること甚だしく、あるいは、会社の秩序を著しく害する行為として、厳しい批判を受けて当然の行為である。 しかも、債権者らは、このような悪質な非違行為を行っているにもかかわらず、該当の各行為をしたこと自体あるいはその趣旨を否認し、債権者らの行為は債務者会社のためにしたものであってなんら責められるべき点はないなどと反論して、現在に至るまで、これらにつき一切反省の意を表することすらしていないことは、本件訴訟における債権者らの主張等から明らかである。 以上によると、その他の非違行為に関する事実関係の有無について判断するまでもなく、債権者らの債務者会社における地位の重要性の程度、前記各非違行為における関与の度合等を総合して、債権者B、同C、同F、同Gをそれぞれ懲戒解雇、同H、同I、同J、同Kをそれぞれ諭旨解雇とした本件懲戒処分は、前記就業規則の規定に照らし有効なものというべきである。 |