ID番号 | : | 06193 |
事件名 | : | 未払賃金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 名古屋近鉄タクシー事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | タクシー運転手による年末年始の年休指定につき、一般的に年末年始が繁忙期とされている時季になされたものであっても、そのような抽象的な必要性や一般的通念に従った時季変更権の行使は適法ではないとされた事例。 年休取得に際し使用者に違法な取扱いがあったとして一〇万円の慰謝料が認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法39条4項 民法709条 民法710条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償 年休(民事) / 時季変更権 |
裁判年月日 | : | 1993年7月7日 |
裁判所名 | : | 名古屋地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成1年 (ワ) 3889 |
裁判結果 | : | 一部認容(確定) |
出典 | : | タイムズ841号162頁/労働判例651号155頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔年休-時季変更権〕 被告が、年末年始のタクシー繁忙期においては、当時のタクシー事業を巡る社会的状況並びに被告の大手タクシー事業者としての社会的責任及び鉄道関連企業としての特殊性に対する配慮から、実際に繁忙であるか否かにかかわらず、その保有タクシーの全車両もしくはこれに近い多数の車両を稼働させるべき必要性があるものと考えていたことが認められる。しかし、原告が本件年休請求をした各期間については、前記のとおりいずれも実際にはタクシーの繁忙期と認めることはできないというのであるから、客観的には、被告において、その保有するタクシーの全車両を稼働させなければならない業務上の必要性があったものと認めることはできないということになる。したがって、右のような業務上の必要性の存在を前提に、本件年休請求をそのまま許容することが、被告の業務に対し具体的な支障を生じさせるおそれがあるとの理由でなした本件時季変更権の行使は、その余につき判断するまでもなく、違法との評価を免れないものである。 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕 本件証拠によって認められる、原告が本件年休請求をした経緯、これに対する被告側の対応、原告が現実に休暇を取得した事実、これに対する被告の対応(休暇期間を欠勤扱いとして処理したが、格別の処分はしていないこと等)、原告が労働基準監督署に相談に行った事実及びそれに関連しての原告・被告間の交渉等に関する事情を総合し、原告の被った不利益、特に年次有給休暇の意義及びこれを取得する権利の重要性並びに被告の行為の違法性の程度等を併せ考えれば、本件についての原告の慰謝料としては、金一〇万円を妥当と認める。 |