全 情 報

ID番号 06207
事件名 地位保全等仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 富士シャリング事件
争点
事案概要  同族会社の取締役に対する無断欠勤・勤務不良を理由とする懲戒解雇が無効とされた事例。
 同族会社の取締役に対する報酬につき、給料中に実質上取締役報酬の性質を有する部分があることは否定できないとしつつ、その額を確定する資料が提出されていないことを理由に、解雇無効に伴う金額の支払いが命ぜられた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 賃金(民事) / 賃金の範囲
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤
裁判年月日 1993年10月12日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成4年 (ヨ) 3472 
裁判結果 一部認容
出典 労経速報1519号10頁/労働判例647号75頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕
 (一) 無断欠勤又は勤務不良について
 債務者が無断欠勤又は勤務不良とする日に、債権者がAビルにおいてテナント募集等に従事していたことは前判示のとおりであり、右が無断欠勤又は勤務不良となるかについて検討するに、B株式会社と債務者が一体の会社であること、平成三年一二月ころまでは債権者がAビルでテナント募集等に従事することは債務者の承認するところであったことはいずれも債務者は争わず、結局、債務者代表者が平成三年一二月二五日、債権者に対しAビルを引揚げてC倉庫の管理業務に従事するよう命じたか否かが問題となる。
 この点、(証拠略)には債務者代表者が右を指示した旨の記載があり、(人証略)は右に沿う陳述をなし、平成四年一月Aビルの仮事務所を二階に移し、電話は転送電話とするなど右になじむ事実を認めることはできるけれども、他方、右をただちに信用するには躊躇を覚えざるをえない上、債務者は平成四年一月以降のAビルの業務に従事する人的手当をしていないこと、債務者代表者が平成四年三月ころ債権者に業務日誌による報告を求めたことは、債権者がAビルで業務に当たることを前提としてはじめて納得できること、現に債権者はAビルの業務に従事していたのに、これに対し債務者は何らの措置をとっていないこと、などに照らして、債権者がC倉庫の業務に従事せよとの業務命令がなされたとまでは認めるに足りない。
 したがって、Aビルの業務に従事していたことをもって、無断欠勤若しくは勤務不良となすことはできない。
〔賃金-賃金の範囲〕
 2 賃金額について
 (一) 債務者は、債権者の受けていた給料は取締役報酬である旨主張するところ、債権者には各種手当が支給されず、その給与額、とりわけ他の従業員の基本給と比較するならば、債権者の受けていた給料中に実質上取締役報酬の性質を有する部分があることは否定できないであろうが、債務者は右額を確定する資料を提出せず、右を確定できない以上、債務者の主張は採用できない。