ID番号 | : | 06210 |
事件名 | : | 賃金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | ウェストメディカルクリニック新宿事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 経営者の依頼によりクリニックの開設者・管理者・院長として勤務した医師が同クリニックの倒産による従業員の未払賃金につき、使用者として支払いを求められた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法10条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 共同経営者 |
裁判年月日 | : | 1993年10月18日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成4年 (ワ) 17986 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例646号51頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-労働者-共同経営者〕 原告らは、被告が訴外Aとともに本件クリニックを共同経営していたと主張するが、被告の賃金の取決め方や勤務形態からして、被告も訴外Aに従属し、同人に雇用される一勤務医に過ぎないものと認められ、原告らもそのように認識していたことが窺われる。前記のとおり、被告は、本件クリニックに勤務中、全く賃金の支払を受けていないことが認められるが、これは、被告が本件クリニックの経営者の立場にあったからではなく、訴外Aから提供される資金が不足したため、他に収入を得られる途のあった被告が、原告らの生活を案じ、自らは、強いて賃金支払を受けようとしなかったためであると認めるのが相当である。 原告らは、被告が、【1】本件クリニックの開設者・管理者として開設届を提出し、【2】本件クリニックの院長として、前記一6のような行動をとったこと、【3】前記一8のように、平成四年七月分の一回めの賃金を原告ら従業員に分配したこと、【4】前記一9のように、社会保険診療報酬の請求書類に自己名義を使用することを承諾し、解雇通知書や給与未払証明書等に、訴外Aとともに、被告の記名押印がなされていることをもって、右主張の根拠とするが、【1】については、被告は、訴外Aから本件クリニックが法人化されるまでの期間、一時的に開設者・管理者となることを依頼され、名目的に開設者・管理者となったものと認められ、原告らと雇用関係があるか否かについては、名目いかんにかかわらず、実質的観点から判断すべきであると考えられること、【2】については、確かに、被告が職制上、院長として、ほとんど本件クリニックに在院しない訴外Aに代わって原告ら従業員の労務管理を行っていたことが認められるが、被告に人事に関する最終的決定権限があったとは認められず、右権限は、訴外Aがこれを握っていたと認められること、なお、Bビルの賃借名義を訴外Aから被告に変更したのは、本件クリニックの開設者を被告名義にしたことに伴うものであったと認められること、【3】については、訴外Aが原告ら従業員に対する賃金支払を遅滞したので、被告も従業員代表としての立場で、右支払を要求し、これを分配したものと認められること、【4】については、確かに、被告名義で社会保険診療報酬請求がなされたものと認められるが、同請求に必要な印鑑や右報酬金の管理は、訴外Aの代理者としてのCがこれを行っており、被告が関与する余地はなかったものと認められること、また、解雇通知書や給与未払証明書に被告の記名押印がなされたのは、原告らの要求があったため、Cにおいて、被告の承諾なくなしたものと認めるのが相当であり、結局原告らが、その主張の根拠とするところは、いずれも理由がないというべきである。 右認定判断したところによれば、被告が訴外Aとともに、本件クリニックの共同経営者として、原告らと黙示の雇用契約を締結したものと認めることはできない。 |