ID番号 | : | 06216 |
事件名 | : | 損害賠償請求控訴・同附帯控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 松蔭学園事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 私立高校の女子教諭に対し、クラス担任等の一切の仕事を奪い、一日中机の前に座っていることを強制したりし、賃金も長年にわたって据え置いたことにつき、業務命令権の濫用にあたるとして、不法行為に基づく慰謝料の支払いが命ぜられた事例。 |
参照法条 | : | 民法709条 民法710条 民法715条 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 業務命令 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償 |
裁判年月日 | : | 1993年11月12日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成4年 (ネ) 2279 平成4年 (ネ) 4319 |
裁判結果 | : | 一部変更(確定) |
出典 | : | 時報1484号135頁/タイムズ849号206頁 |
審級関係 | : | 一審/東京地/平 4. 6.11/昭和61年(ワ)11559号 |
評釈論文 | : | 坂本宗一・平成6年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊882〕338~339頁1995年9月 |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-業務命令〕 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕 二 控訴人の責任及び被控訴人の損害 以上の認定事実によって判断すれば、控訴人が被控訴人に対し、仕事外し、職員室内隔離、第三職員室隔離、自宅研修という過酷な処遇を行い、さらに、賃金等の差別をしてきた原因については、被控訴人が二度にわたって産休をとったこと及びその後の態度が気にくわないという多分に感情的な校長の嫌悪感に端を発し、その後些細なことについての行き違いから、控訴人側が感情に走った言動に出て、執拗とも思える程始末書の提出を被控訴人に要求し続け、これに被控訴人が応じなかったため依怙地になったことにあると認められるのであって、その経過において、被控訴人のとった態度にも反省すべき点がなかったわけではないが、この点を考慮しても、控訴人の行った言動あるいは業務命令等を正当づける理由とはならず、その行為は、業務命令権の濫用として違法、無効であることは明らかであって、控訴人の責任は極めて重大である。 そして、被控訴人に対する控訴人の措置は、見せしめ的ともいえるほどに次々にエスカレートし、一三年間の長きにわたって被控訴人の職務を一切奪ったうえ、その間に職場復帰のための機会等も与えずに放置し、しかも、今後も職場復帰も解雇も全く考えておらず、このままの状態で退職を待つという態度に終始しているのであって、見方によっては懲戒解雇以上に過酷な処遇といわざるを得ない。 そして、このような控訴人の行為により、被控訴人は、長年、何らの仕事も与えられずに、職員室内で一日中机の前に座っていることを強制されたり、他の教職員からも隔絶されてきたばかりでなく、自宅研修の名目で職場からも完全に排除され、かつ、賃金も昭和五四年度のまま据え置かれ、一時金は一切支給されず、物心両面にわたって重大な不利益を受けてきたものであり、被控訴人の被った精神的苦痛は誠に甚大であると認められる。 右の各違法行為は、控訴人の設置する学園の校長又は副校長によって行われたものであるから、控訴人は、民法七〇九条、七一五条、七一〇条に基づき、その不法行為によって被控訴人が被った損害を賠償すべき義務があるところ、被控訴人の精神的苦痛を慰謝すべき賠償額は、本件一連の措置を一体の不法行為として全体的に評価・算定すべきであり、前記のとおりの控訴人の責任の重大さにかんがみると金六〇〇万円をもって相当とする。 |