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ID番号 06221
事件名 退職金請求事件
いわゆる事件名 大和コンクリート工業事件
争点
事案概要  取締役であった原告らが退職に当たり、役員退職金もしくは従業員としての退職金の支払いを求めた事例。
参照法条 労働基準法11条
労働基準法2章
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 退職慰労金
賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算
裁判年月日 1993年11月30日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成3年 (ワ) 10862 
裁判結果 棄却
出典 労働判例646号42頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-退職金-退職慰労金〕
 被告会社の定款において、役員の退職金の支払条件、内容等に関する明文の規定がないことは当事者間に争いがないところ(〈証拠略〉によると、被告会社の定款二二条に「取締役及監査役の報酬及退職役員の慰労金は株主総会の定めるところによる。」との規定があることが認められるのみである。)、右退職金は、商法二六九条、二七九条一項の報酬に該当するから、株主総会の決議を要するものと解するのが相当である。このことは、原告ら主張のような慣行の有無や当該会社の規模に左右されないといわなければならない。ところが、原告らの役員としての退職金については、被告会社の株主総会の決議はなされていないのであるから、原告らの請求のうち、役員としての退職金の支払請求は、この点において理由がないことに帰する。
 原告らは、被告会社の側から株主総会の決議がないことをもって、退職金の支払を拒絶することは信義則に反すると主張しているが、商法二六九条、二七九条一項は強行規定であり、右決議の存在は役員の退職金請求権の成立要件であるから、これを欠く以上、右請求権は成立していないのであり、信義則を問題にする余地はないというべきである。
〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕
 前記事業団の退職金制度は、支払義務者が異なるなど事業主自らが定める退職金制度とは別個のものであるから、被告会社が前者の制度を利用していることを根拠として、原告らが被告会社に対して従業員としての退職金を当然に請求できるものでもない。
 そして、ほかに、被告会社において、労働協約、就業規則、労働契約等により従業員の退職金を支給すること及びその支給基準が定められていることを認めるに足りる証拠はないし、また、その点に関する労働慣行を認めるに足りる証拠もない。したがって、原告らの従業員としての退職金の請求も理由がない。