ID番号 | : | 06225 |
事件名 | : | 労災補償不支給決定取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 渋谷労基署長(グリーンキャブ)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 停車中に追突され頚椎捻挫等の業務上疾病で加療中のタクシー運転手の右疾病が「治癒」したかどうかが争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法12条の8第1項2号 労働者災害補償保険法14条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 休業補償(給付) |
裁判年月日 | : | 1993年12月17日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成1年 (行ウ) 165 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例649号47頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-休業補償(給付)〕 労災保険法上の「治ゆ」とは、本件事故以前の状態に服したことを意味する「完治」を指すものではなく、発症当初の急性症状が消退し、慢性症状は持続していても、症状が安定し、療養を継続してもその医療効果が期待できないと判断されるに至ったときである「症状固定」を指すものと解するのが相当である。 これを本件についてみると、前記一ないし三を総合すれば、昭和五九年八月以降の治ゆ認定時までの原告の症状は、本件事故からの時間的経過に照らせば、当初の急性症状が消退したものとみて差し支えがなく、その主な症状は右肩甲骨周囲の疼痛及び右上肢抹梢神経痛というものであって、比較的安定をみており、かつ増悪傾向はみられず、その間の治療方法、内容もほぼ定形化された対症療法にとどまること、A医師は、昭和五九年夏頃から、原告の症状が一進一退ながらほぼ安定してきていたので、原告の症状固定を意識するようになり、その後の推移をもみて、昭和五九年一一月一五日の診断時に症状固定と診断したこと、治ゆ認定時以降のB病院における治療も、治ゆ認定前と差異のない対症療法であって、治ゆ認定時の愁訴性症状にみるべき変化がなく、その治療効果があったとみることができないこと、その後のC医院における治療も、ギブス固定及びギブスコルセット装着時に原告の症状が軽減したことは認められるが、これは対症療法としての効果しか認められず、他の治療も、B病院における治療に比してより有効なものがあったとは認め難いこと等からすれば、昭和五九年一一月一五日の時点には、原告の症状は慢性化し、療養を継続してもその医療効果を期待できない症状固定の状態にあったものと認めるのが相当である。 |