全 情 報

ID番号 06244
事件名 退職金等請求事件
いわゆる事件名 日本旅行事件
争点
事案概要  顧客から集金した旅行代金を不正に領得したこと、禁止されていた新幹線回数券の掛け売りをしたことなどを理由とする懲戒解雇が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項3の2号
労働基準法89条1項9号
民法1条3項
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為
裁判年月日 1994年2月23日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (ワ) 6388 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1533号27頁/労働判例652号43頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕
 1 原告が、右行為の発覚後、被告に対し、右一〇〇万円と本件切符代金額を入金したことは前判示のとおりであり、(証拠・人証略)及び弁論の全趣旨によれば、被告の営業所において、いわゆる金券ショップに対してJR発行のエコノミー切符を販売したことがあること、被告が、金銭上の不正行為を行った従業員中、昭和六〇年から昭和六二年ころまでに三名、平成四年三月ころ一名について、いずれも自己都合退職とした例のあること、原告の従前の営業成績が良好であったこと、が認められる。
 2 しかし、原告の一1、2の行為が被告の職場規律に著しく違反し、被告に対する顧客の信頼を著しく損なうものであり、被告に重大な損害を与えるものであることは、四で判示したとおりであること、被告は、平成元年以降、その従業員が顧客から集金した旅行代金を横領した事案少なくとも一三例について、右従業員を懲戒解雇したが、右一三例中七例については横領額全額について被害弁償がされており、その他の事案でもその一部が返済されていること(〈証拠・人証略〉)、自己都合退職の右四名については、不正行為の態様、被害額など事案の詳細が明らかでなく、本件事案と同様の懲戒処分がなされるべき事案であったとは認めるに足りないこと、被告の営業所において金券ショップに対してJR発行のエコノミー切符を販売した事実も、原告の一2の行為のように右切符を購入していない顧客について未収金があるかのような虚偽の処理をしたものとは認められず、原告の右の行為と同一に論ずることはできないことなどの点を考え併せると、1の点をもって、本件懲戒解雇が、他の処分例と比較して均衡を失するものとは認められないし、職場規律違反の内容、程度など本件における諸般の事情に照らしても重きに失するものとはいえない。
 したがって、本件懲戒解雇が、解雇権の濫用に当たるものとは認められず、ほかにこれを認めるに足りる事情の立証もない。
〔賃金-退職金-懲戒等の際の支給制限〕
 以上によれば、本件懲戒解雇は有効であると解すべきところ、被告は、その就業規則において、懲戒解雇された者に対しては退職金を支払わない旨を定めていたのであるから(就業規則八二条、賃金規程八二条二項。〈証拠略〉)、原告の本件退職金支払請求は、その余の点を判断するまでもなく、理由がないものというべきであり、また、原告の本件解雇予告手当支払請求も理由のないことが明らかである。