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ID番号 06246
事件名 雇用契約存在確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 京都コンピュータ学院洛北校事件
争点
事案概要  余剰人員対策としての他社における研修命令を拒否し、また一一日間の無断欠勤を理由とする懲戒解雇が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 無届欠勤・長期欠勤・事情を明らかにしない欠勤
解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反
裁判年月日 1994年2月25日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成4年 (ネ) 1404 
裁判結果 一部取消,一部棄却
出典 労経速報1527号7頁/労働判例673号158頁
審級関係 一審/京都地/平 4. 5. 7/平成3年(ワ)994号
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-無届欠勤〕
〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕
 右認定の事実によれば、被控訴人は、一年以内に国家試験第二種情報技術者試験に合格することを採用条件(もし右期間内に合格しなければ正職員にしない)として控訴人に雇用されているところ、コンピューターの技術者を養成する学校を経営する控訴人としては右採用条件は必要な条件であるから、被控訴人はできるだけ速やかに右試験に合格すべきであったにもかかわらず、これを今日まで果しておらず、右期限が経過しても、当初の採用条件に相違して恩情的に正職員に登用されているものの、その後も一向に右試験に合格しないばかりか、近時生徒数が漸次減少して行くことが見込まれるために、控訴人においては、被控訴人を適切に処遇すべき職場がなく余剰人員として抱えざるを得ない実情にあったと、しかるに、控訴人は、被控訴人に対し何とか職場を確保しようと、前記PCセンター構想を考案したり、出向先や研修先を見附けたりして、その労働力の適切な活用を図り、もし、これらを契機にして、被控訴人が一層努力して前記試験に合格すれば、控訴人が経営する学院の学生の指導者として迎え入れることを計画し、期待を掛けていたものであるが、被控訴人は、この期待に全く応えようとせず、ほとんど毎年受験はするものの不合格を繰り返し、出向先の評判も著しく悪く、自己のおかれた立場を反省せず、控訴人の気の長い恩情的配慮を全く理解しようとしていないことが推認できること、ところで、A会社での出向期限が切れた後に、控訴人はなお被控訴人に対し職場を確保しようと腐心して、前記のとおり数社に当たり、B株式会社が引受けを承諾したので、同社において研修をなすべきであると考え、前記のとおり、被控訴人に対し研修の業務命令を発したものであるところ、被控訴人はこれを素直に受入れようとせず(なお、被控訴人は平成二年一二月一八日付けで控訴人宛研修に応じる旨の文書を送付してはいるが、これには、控訴人として受入れ難い前記要望事項が掲げられているばかりか、直ちに右研修に出る行動に及んではいないので、右文書の送付をもって、被控訴人が右研修の業務命令に従ったとは到底言えない)、その後、前記のとおり度々控訴人から文書又はCを介し口頭で、右業務命令に従うよう厳重に警告ないし指示があったにもかかわらず、これに応じず、右業務命令に指示された研修開始日を徒過して、前記懲戒解雇がなされた日まで右命令に従った就労をしなかったものであること、なお、その間、被控訴人はD校を訪問して、その関係者、又はCから自宅待機するよう指示をされてはいるが、それは被控訴人が業務命令に従わなかったためやむを得ず指示したものであることが窺われ、その際、業務命令に違反している旨強く非難されているので、右自宅待機をもって控訴人が右業務命令を撤回したものとは言えず、その事は被控訴人においても充分理解し得たことが窺われること、しかして、被控訴人が右業務命令に違反したことは、同人が自己の置かれた前記立場の自覚を欠如し、控訴人の恩情的配慮に対する理解のなさが重要な事由になっているものと推認できるところであるから、被控訴人の右業務命令違反及びこれに伴う少なくとも平成二年一二月一二日から同月二二日までの間の無断欠勤は、労働者として重大な義務違反であり、「業務命令違反」及び「無断欠勤」の懲戒事由に該当すると認めるのが相当である。