ID番号 | : | 06251 |
事件名 | : | 遺族補償給付等不支給処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 大阪西労基署長(赤帽竹村運送店)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 労災保険の特別加入者が運送用の業務車を運転して帰宅途中に気分が悪くなり、降車時に倒れ病院に運ばれた後に死亡したことにつき、業務災害に当たらないとした労基署長の不支給処分が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法27条3号 労働者災害補償保険法12条の8第1項 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 労災保険の適用 / 特別加入 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等 |
裁判年月日 | : | 1994年3月7日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成4年 (行ウ) 12 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1539号21頁/労働判例656号72頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-労災保険の適用-特別加入〕 労災保険法二七条三号に該当する者として労災保険に特別加入した者は、労災保険法の適用上労働者とみなされ(同法二九条一項三号)、この者が業務上死亡したときは、その遺族は遺族補償給付を、葬祭を行う者は葬祭料を、それぞれ労災保険給付として受けることができる(同項五号、同法二八条一項二号、一二条の八第二項)。 原告は、軽貨物自動車を使用して軽車両等運送事業を行う者(いわゆる赤帽)として(労災保険法二七条三号、同法施行規則四六条の一七第一号)労災保険に特別加入していたAの妻であるから、Aの死亡が業務上のものであれば、労災保険給付として遺族補償給付及び葬祭料を受けることができる。 そして、労災保険法三一条の委任を受けて定められた労働省令である労災保険法施行規則四六条の二六は、「労災保険法二七条各号に掲げる者に係る業務災害及び通勤災害の認定は、労働省労働基準局長が定める基準によって行う。」としており、右規定に基づき、同局長は、軽車両等運送事業を行う特別加入者の業務上外の認定について、基発第一九一号及び基発第六七一号の二つの労働省労働基準局長通達をもって基準を定めている(〈証拠略〉)。右両通達は、次のような内容を定めている(以下「本件通達」という。)。 「一 軽自動車を使用して行う軽車両等運送事業(通称「赤帽」といわれている。)に係る特別加入者については次の場合に限り業務遂行性を認めるものとする。 イ 軽自動車を使用して行う軽車両等運送事業の範囲内において事業用自動車を運転する作業(運転補助作業を含む。)、貨物の積卸作業及びこれらに直接附帯する行為を行う場合 ロ 突発事故(台風、火災等)等による予定外の緊急の出勤途上 二 業務起因性の判断は、労働者の場合に準ずるものとする。」 本件通達によれば、Aのような特別加入者たる軽車両等運送事業者の場合、その行う業務のすべてが労災保険法における「業務上死亡」の判断の基礎となる業務になるわけではなく、本件通達第一項が規定する業務遂行性の認められる業務に限って「業務上死亡」の判断の基礎とされ、このような業務と死亡との間に業務起因性がある場合に限り「業務上の死亡」と認められ、その業務起因性は労働者の場合に準じて判断されることになる。 労災保険法が特別加入制度を設けた趣旨は、労基法の適用労働者以外の者であっても、その業務の実情、災害の発生状況等に照らし実質的に同法の適用労働者に準じて保護するにふさわしい者については、労災保険への加入を認め、その適用により、労働者に準ずる保護を与えることにあるというべきであるので、特別加入者の被った災害が業務災害として同法により保護される場合の業務の範囲についても、特別加入者の行うすべての業務が含まれるものではなく、右労働者の行う業務に準ずる業務の範囲に限られるものと解すべきである。 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕 Aの死因が嚢状脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血であるとする原告の主張は採用することができず、ほかにAの死因を明らかにする証拠もないから、結局、Aの死因は不明であるというほかなく、したがって、Aの死亡と業務との間に相当因果関係は認められず、Aの死亡に業務起因性を認めることはできないといわざるを得ない。〔中略〕 Aの死因は不明であり、業務との間に相当因果関係を認めることはできないし、仮に、Aの死因が原告の主張する嚢状脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血であるとしても、業務がその発症の相対的に有力な原因であるとはいえず、また、発症後の増悪の相対的に有力な原因であるともいえないから、いずれにしても、業務と死亡との間に相当因果関係を認めることはできない。したがって、Aの死亡が業務上のものでないとした被告の本件処分は正当であるから、原告の本訴請求は理由がない。 |