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ID番号 06252
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 ユニスコープ事件
争点
事案概要  勤務態度が非協調的・独善的なものであり、納期に遅れながらその旨を責任者に報告しなかったことなどを理由とする解雇には合理性があり、右解雇を理由とする損害賠償請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法2章
民法709条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
解雇(民事) / 解雇事由 / 職務能力・技量
解雇(民事) / 解雇事由 / 協調性の欠如
裁判年月日 1994年3月11日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成3年 (ワ) 16754 
裁判結果 棄却,却下
出典 労経速報1528号3頁/労働判例666号61頁
審級関係
評釈論文 辻村昌昭・季刊労働法177号136~140頁1995年12月
判決理由 〔解雇-解雇事由-職務能力・技量〕
〔解雇-解雇事由-協調性の欠如〕
 右認定した事実によれば、原告の編集者としての勤務状況は、編集者としての能力こそは平均的なものであり、技術文書の編集にあたって度々修正を加える原告のやり方も、高品質の技術文書に近づけようとする原告の意欲に基づくものと推察され、それ自体は非難に値するものとはいえないが、原告の場合には、自己のやり方に固執する余り被告において定められた仕様に従わない態度をとったり、度重なる修正変更を加えたり、あらかじめ合意したスケジュールどおりに仕事を進行させないことによって、他の共同作業者及び管理者に困惑や迷惑を与えたばかりか、共同作業者及び管理者としばしば争いとなったことが認められるから、原告の勤務態度は、非協調的・独善的なものであったものと評価されてもやむをえないものということができる。また、被告における編集者には、当然のことながら顧客との間で取り決められた納期を遵守しようとする態度が要求され、納期に間に合わないような場合においても、そのことを事前に管理者に対して申告し、社内或いは顧客に対する対応措置を求めるなどとして、納期に間に合わないことによる混乱を未然に防止しようとする態度が要求されるところ、右認定した事実によれば、原告の仕事はしばしば遅れがちとなり、納期に遅れることが明らかになっても、そのことを納期直前まで編集責任者に告げないために、納期当日になって業務上の混乱を生じさせたことが認められるのであるから、納期を遵守する態度の面においても、これが欠けていたということができる。しかも、前記1で認定した事実によれば、被告代表者は、原告の右のような勤務態度を理由に直ちに原告を解雇したものではなく、原告が被告に勤務していた約一年五カ月の間、原告に対し、その勤務態度の問題点を度々指摘して注意を喚起したり、勤務体制に配慮するなどして、原告の非協調的な勤務態度の改善を求めてきたが、解雇されるまでその勤務態度はついに改善されなかったばかりか、かえって、反抗手段としてタイムカードを押さなかったり、無断欠勤をするなどしたことも認められる。以上の諸事情を総合すれば、本件解雇は、合理的理由があり、解雇権の濫用には当たらないというべきである。
〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 3 右1及び2の認定及び判断に対し、原告は、被告代表者は前記1の(九)の件で感情的になって原告を解雇したものであり、被告の主張する解雇理由は捏造されたものであると主張し、本件解雇に至る経緯についての原告本人尋問の結果、(いずれも原告代理人が原告の陳述を聴取して作成した陳述書)、(原告代理人がAの陳述を聴取して作成した陳述書)中には原告の主張に沿う部分があるが、その内容は、本件解雇以前に作成され、かつ原告に対して直接その勤務態度の問題点を指摘している(Bの原告に対するファックス文書)、(被告代表者の原告に対する電子メール文書)、(被告代表者の原告に対する書簡)の内容と明らかに整合性を欠くものであり、右書証を含めた証拠から明らかに認められる事実経過、すなわち、Bが、バンクーバー出張中の原告に対し、原告の一貫性に欠ける仕様の変更及びスケジュールに対する無責任な態度を抗議する内容のファックスを送っていること、被告代表者が、原告に対し、Bに対する態度及び原告の仕事の状態を叱責する内容の文書を送付したこと、帰国後から二カ月間、原告がタイムカードをまったく押さなかったこと、原告の平成三年度の昇給率が原告と同等の他の社員よりも低いものであったこと、昇給にあたって、被告代表者は、原告との間で原告の勤務態度の改善について話合いの場を持ち、更にその後にも、原告の勤務態度の改善を求める文書を交付していること等の経過に照らして不自然であり、その信用性には疑問があるというほかない。これに対し、前記1の認定に沿う被告代表者本人尋問の結果及び(B作成の陳述書)の各内容は、右各書証及び事実経過の内容との整合性の点からみて、その信用性を疑わしめる点はない。したがって、原告の前記主張は採用することができない。
 4 以上によれば、本件解雇が解雇権の濫用として違法なものであることを理由に損害賠償を求める原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。