全 情 報

ID番号 06255
事件名 雇用契約上の地位確認等請求事件
いわゆる事件名 フットワークエクスプレス事件
争点
事案概要  宅配貨物の運転者たる従業員が、能率給などを不正受給していたことに関与したとして懲戒解雇された店長が右解雇の効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
労働基準法20条3項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為
解雇(民事) / 解雇予告と除外認定 / 除外認定と解雇の効力
裁判年月日 1994年3月15日
裁判所名 京都地
裁判形式 判決
事件番号 平成4年 (ワ) 3229 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1528号11頁/労働判例664号75頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕
 本件懲戒解雇に係る懲戒解雇事由の存否について(証拠略)によれば、本件不正受給に係る各事実のうち、前記第二の一3(三)(1)については原告の指示によってAらがこれを行い、同(2)についてはAらの行為を原告が知りながらあえて放置していたものと認めることができ、本件不正受給に係るこれらの原告の行為は、被告の就業規則第一四二条第八号所定の懲戒解雇事由に該当するものと認めるのが相当である。〔中略〕
 被告は、いわゆる宅配貨物の取扱業務等を行う必要上、ミニ店と呼ばれる宇治店と同規模で、同店と同様の管理体制をとる小店舗を多数展開していることが認められるところ、Aら宇治店所属の運転手四名全員が常習的に多岐にわたる方法で配達枚数等の不正計上を行っていたこと、Aらがそのような方法により賃金の本件不正受給を行うことを同店の店長である原告が指示し、又は知りながらあえて放置したことなど、前記認定の本件不正受給の態様及びそれに対する原告の関与の態様に照らせば、それが被告の会社秩序、業務体制に与えた影響は相当大きいものといわざるを得ず、原告が主張する各事情を最大限参酌しても、本件不正受給に関し、原告を懲戒解雇にすることには合理性があるものと評価せざるを得ない。
〔解雇-解雇予告と除外認定-除外認定と解雇の効力〕
 原告は、本件懲戒解雇の手続上の瑕疵として、被告が「行政官庁の認定」を受けていない点を指摘するところ、確かに、弁論の全趣旨によれば、本件懲戒解雇に当たり、被告が労働基準法第二〇条第三項の「行政官庁の認定」を受けていないことが認められる。しかしながら、同項については、「行政官庁の認定」を得ることを即時解雇の有効要件とする趣旨の規定ではなく、「行政官庁の認定」の有無は、懲戒解雇の効力には影響を及ぼさないものと解すべきであるし、また、(書証略)によれば、被告の就業規則には、「懲戒解雇は原則として行政官庁の認定をうけ、予告せず解雇……する」との定めがあることが認められるものの、その文言に照らせば、右の定めは、懲戒解雇の効力を「行政官庁の認定」の有無に係らしめることにより、被告の懲戒解雇の行使に自律的制限を加える趣旨のものではなく、単に労働基準法第二〇条第三項の規定の趣旨を引き写したにすぎないものと解するのが相当である。