全 情 報

ID番号 06265
事件名 退職金請求事件
いわゆる事件名 財団法人空港環境整備協会事件
争点
事案概要  就業規則による賃金規定の改正につき、退職金については減額となるが、給与自体は増額されており、公務員に比して高額となる退職金制度を改正したことには合理性があるとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条3の2号
労働基準法90条
労働基準法93条
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 退職金
就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 賃金・賞与
裁判年月日 1994年3月31日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成4年 (ワ) 14405 
裁判結果 棄却(確定)
出典 タイムズ853号184頁/労経速報1529号3頁/労働判例656号44頁
審級関係
評釈論文 森戸英幸・ジュリスト1074号189~192頁1995年9月1日/蓮井俊治・平成6年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊882〕350~352頁1995年9月
判決理由 〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-退職金〕
〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-賃金・賞与〕
 2 右の諸事情及び前記の認定のとおり、改正前の給与制度には不合理な点があり、給与、退職手当を含めて勤労意欲を向上せしめるようなバランスのよい給与制度とする必要性があったこと、退職手当の算定方式については、その支給割合が極めて高水準で、しかも、支給限度がなく、公務員の退職手当より相当有利なものであったため、算定方式を従来のままにして、社会的な趨勢ともなっている定年を延長し、かつ給与も増額するとするなら、旧退職規程の不当性はさらに拡大することになるのであって、本件退職規程変更が給与改善及び定年延長の前提として必要不可欠であったことに鑑みると、本件給与制度改正の必要性が認められ、かつ、その改正された給与制度の内容自体、公務員に極力準じたものになっており、相応の社会的妥当性が存すると認められる。
 五 以上、本件退職規程変更によって被った原告の不利益の程度、本件退職規程変更の必要性、他の労働条件の改善内容を総合して考慮するならば、本件退職規程変更により職員が被る不利益はその変更後の一定の短期間内に限って生ずるもので、かつ、その不利益の程度も僅かである反面、本件退職規程変更が本件給与制度改正及び定年延長の前提として必要不可欠なものであったことは十分首肯でき、内容自体にも社会的妥当性が認められるから、本件退職規程変更は被告職員である原告がこれを受忍すべき高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであるというべきである。
 以上によれば、本件退職規程変更は有効なものというべきであるから、原告の請求は理由がない。