ID番号 | : | 06273 |
事件名 | : | 損害賠償請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 荏原製作所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | ごみ処理プラントの水素ガス爆発事故につき、右プラントを市に納入した会社には、本件爆発事故発生の予見可能性がなかったとされた事例。 市は、本件爆発事故発生の予見可能性がなかったとされた事例。 プラント製造会社が、市に対して、その操業に従事する労働者が通常の就業中に生命身体の損害を受けることのないよう安全を確保すべき設備の設置に努力するという契約上の責任を負担したときは、市以外の労働者に対してもその生命、身体について損害を回避すべき注意義務を負うとされた事例。 市は、本件プラントに十分な墜落防止設備を設置していなかったことに瑕疵があったとして、民法七一七条、国賠法二条に基づく損害賠償責任が肯定された事例。 |
参照法条 | : | 民法709条 民法717条 国家賠償法2条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 1994年4月28日 |
裁判所名 | : | 大阪高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成4年 (ネ) 266 |
裁判結果 | : | 原判決一部変更 |
出典 | : | タイムズ878号172頁/労働判例655号22頁 |
審級関係 | : | 一審/大津地/平 3.10.21/昭和61年(ワ)303号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕 本件灰バンカー内に多量の水分が存在することが予見できたとしても、アルミニウム成分の存在を予見できたことを認めることはできないし、東京都清掃局葛飾清掃工場で、灰冷却水槽での水素ガス爆発が発生した事例が報告されているものの、本件事故では、灰バンカー内での水素ガス爆発の有無が問題となっているのであって、その間には物理的、化学的条件が大幅に相違するから、右葛飾清掃工場の事例が報告されていたことがあるとしても、本件プラントでの水素ガス爆発の可能性を予見できるとすることはできない。〔中略〕 2 被控訴会社が被控訴人市に対し、本件プラントのような工場設備を製造し、安定した操業をなしうる状態で引き渡すこととともに、被控訴人市に対し、付随的に、本件プラントの操業に従事する労働者が、通常の就業中に生命身体の損害を受けることのないように、その安全を確保すべき設備の設置に努力すべきことの契約上の責任を負担したようなときは、その引き渡しがなされた後であっても、保証期間が経過する前においては、被控訴会社は、被控訴人市以外の右労働者に対しても、一定の範囲で、その生命身体についての損害を回避すべき注意義務を負担するものということができる。したがって、被控訴会社は、右の範囲で、右労働者の生命身体につき損害が生ずる結果を予見することが可能であって、しかも被控訴人市に対し右結果の発生を防止できる措置をなすべき義務を負担するのにもかかわらず、右措置をしなかった結果、右労働者の生命身体に損害が発生したと認められるときは、被害者に対し右損害を賠償すべき責任があるというべきである。〔中略〕 本件事故当時、被控訴人市が本件プラントを所有し、また営造物として設置管理していたことは当事者間に争いがない。 前示認定のところからすると、本件プラントは、本件事故当時、その操業中に灰ブリッジが発生し、これを除去しなければ操業に支障が生じ、そのためには作業員が高所作業をする必要があるのに、十分な墜落防止設備を備えていない瑕疵があったものであり、本件事故による控訴人らの損害は右瑕疵により生じたといえるから、被控訴人市は、民法七一七条、国賠法二条により、右損害を賠償すべき義務があるといわなければならない。 |