全 情 報

ID番号 06280
事件名 損害賠償請求事件/全員返還請求反訴事件/雇用関係確認請求事件
いわゆる事件名 関西外国語大学(第一)事件
争点
事案概要  外国人教員が書籍購入に関連して大学に不正に損害を与えたことが就業規則の懲戒解雇事由に当たるとして懲戒解雇され、その効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 解雇(民事) / 解雇手続 / 解雇理由の明示
裁判年月日 1994年5月30日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (ワ) 3082 
昭和61年 (ワ) 5267 
昭和61年 (ワ) 8313 
裁判結果 棄却,認容
出典 労経速報1533号11頁/労働判例654号31頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕
 同原告は、被告に対し、このようなA社の実態や値引分を同社に取得させることについて説明をしなかったばかりでなく、同社がインドにおける名の知られた書籍販売出版業者であるという事実に反する説明をした上、右値引きについても全く知らせず、被告にこのような方法による図書購入を開始継続させ、値引分を減額しない額の代金を支払わせて、値引分を同社に取得させ、実質的には、同原告の親族又は同原告自身にこれを取得させていたのであるから、同原告のこのような行為は、就業規則所定の懲戒解雇事由である「業務に関し私利を計り」(七五条七号)又は「故意又は過失により被告に損害を与え」る行為(同条一〇号)に当たるものといわざるを得ない。
 のみならず、被告大学の教授の地位にある同原告が、被告に対し、事実に反する説明をして、被告の承諾を得ることなく、私学振興財団から交付される補助金や被告自身の金員による図書の購入について、前記のような自己又は自己の親族が利得していると疑われても仕方がない取引方法を採っていたこと自体、就業規則所定の懲戒解雇事由である、故意又は過失により被告の信用を傷つける行為(同条一〇号)に当たるものと解すべきである。
 また、(一)(9)判示のとおり、同原告は、B社からA社を介して被告が購入した図書代金全額の支払を受けていたのに、被告に無断で、被告がインドで出版した図書をA社の名義でB社に対し売却して、右代金債権と同社の同額の図書代金債権とを相殺し、同社も同額の売買代金の消滅を認めたにもかかわらず、右代金相当額を返還せず、これを自己又はA社に領得させており、同原告の右の行為は、故意又は過失により被告に損害を与えるものとして、就業規則七五条一〇号所定の懲戒解雇事由に当たるものというべきである。〔中略〕
 同原告には、被告主張の懲戒解雇事由の一部は認められないものの、前記1、2(三)のような就業規則所定の懲戒解雇事由が認められるので、被告の本件解雇は有効である。