ID番号 | : | 06300 |
事件名 | : | 譴責処分無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本電信電話(年休)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 日本電信電話会社の職員が、約一か月の集合訓練期間中の一日の年休取得の時季指定につき使用者が時季変更権を行使したにもかかわらず、そのまま訓練を欠勤したために無断欠勤としてけん責処分がなされたのに対して、右けん責処分の効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法39条4項 労働基準法89条1項4号 |
体系項目 | : | 年休(民事) / 時季変更権 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用 |
裁判年月日 | : | 1994年8月31日 |
裁判所名 | : | 東京地八王子支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成3年 (ワ) 1677 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | タイムズ878号191頁/労経速報1541号3頁/労働判例658号43頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔年休-時季変更権〕 使用者による時季変更権の行使は、「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合」にのみ許されるが(労働基準法第三九条四項但書)、この「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するか否かについては、当該労働者の所属する事業場を基準として、事業の規模及び内容、当該労働者の担当する作業の内容及び性質、作業の繁閑、代替要員確保の難易、労働慣行等、諸般の事情を考慮して客観的かつ具体的に判断すべきである。〔中略〕 日進月歩する電気通信の事業を営む被告にとって、その職員に対し、常に技術革新に即応した高度の技術を習得させ、その能力向上をはかることは、被告の事業の遂行上不可欠な業務であるところ、職員に対し、急速な技術革新に対応しうる高度な知識、技能を習得させることを目指して行われる職場内教育(研修)は、まさに被告の事業の遂行上必要な業務であり、被告の各事業場がその業務の遂行上必要とされる技術研修、訓練に所属職員を参加させることが当該事業場における事業にあたることはいうまでもなく、また、「研修」という業務の性格上、その業務が非代替的なものであることも論をまたないところである。 したがって、当該事業場において特定の職員を指名して右の技術研修ないし訓練に参加させることは、当該職員に対し非代替的な業務の遂行を命じたものであるから、当該研修を命じられた職員が、研修期間内に年休を取得することは、原則として、客観的にその所属事業場における事業の正常な運営を妨げる場合にあたるものとして、被告において時季変更権を行使することが許されるものと認めるのが相当である。〔中略〕 原告は、平成元年度の保全科ディジタル応用班訓練受講者としては、立川ネットワークセンタを代表して本件訓練に参加したものであって、当然、訓練の成果を立川ネットワークセンタに持ち帰る必要があると認められるし、また、近年の被告における交換機のディジタル化への動きや、担当職員による共通線に関する知識や技術の習得がますます重要になってきていること等を併せ考えると、原告が、本件訓練に出席することは、立川ネットワークセンタの代表としての非代替的な業務であるばかりでなく、被告がその国内電気通信事業を推進するにあたってもきわめて重要な意味を有する業務であると認めることができる。したがって、原告が本件訓練期間中に年休を取得することは、被告の「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当すると認められる。 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕 以上の事実を総合して考えると、原告の本件における年休請求に対する被告の時季変更権行使が適法であってまたやむを得ないとしても、その結果、被告が、本件訓練を欠席した原告に対し、無断欠勤であるとして本件譴責処分等を行ったことは、従前の被告における集合訓練中の年休請求者に対する取扱いからみて、行き過ぎであると言わざるを得ず、権利の濫用であると認めることができる。 5 したがって、本件譴責処分は無効であり、右処分に基づく原告の定期昇給の四分の二の減給は理由がないし、また無断欠勤にも該当しないので原告の一日分の賃金カットも理由がない。 |