ID番号 | : | 06301 |
事件名 | : | 解雇無効確認請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 安田火災海上保険事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 火災海上保険の営業課長が、銀行に保険契約を設定してもらうため口座を設け、架空の保険料ローンクレジット契約を締結したことを理由とする懲戒解雇が有効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 民法1条3項 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為 |
裁判年月日 | : | 1994年9月6日 |
裁判所名 | : | 長崎地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成4年 (ワ) 460 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | タイムズ865号205頁/労経速報1539号10頁/労働判例660号39頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕 5(一) 以上認定の諸事実を基本に、本件で問題とされている原告の行為を簡単にまとめると、以下のようになる。 被告内部において販売成績の目標の一つとして設定されていたいわゆる「予算」は、会社としては、社員にノルマを課すようなものと捉えていなかったものの、原告自身は、必ず達成しなければならないノルマと受けとめていた。そして、原告は、平成二年の初めに発生したA会社との問題等によって、原告の所属していた自動車営業課の営業成績が大幅に落ち込むものとの危機感を抱き、同課の業績の維持をはかろうと、銀行に積立保険を紹介してもらうことを思いついた。しかし、銀行に保険契約を紹介してもらうためには、銀行に対して、個人名義の預金を設定することが求められたため、当初は自己の金で預金を設定していたが、それでも足りなくなり、被告の代理店から集められた収入保険料を領得、流用し、銀行への預金設定の資金とした。しかしながら、そのために不足した右保険料分の穴埋めをする必要が生じたため、事情の全貌を知らない部下らの名義を用いて架空のBクレジットの保険料ローンを締結し、Bクレジットから振り込ませた金銭を、右不足した保険料として会社に納入した。 (二) 原告の右記行為は、被告の社内規程によって、本来被告に対して納入すべきこととされている収入保険料を勝手に領得し、自己名義の預金を設定したうえ、その事実を隠蔽するために、事情の全貌を知らない自動車営業課の職員およびその関係者の名義を用いて、架空の保険料ローンクレジット契約を締結したというものであり、右不正行為に流用された保険料が総額で四〇〇〇万円余りと高額であることも考慮すると、かかる原告の行為は、金融機関の管理職として、あってはならない行為といわなければならない。そして、原告の右のような不正行為は、新聞等のマスメディアによって、一般公衆の知るところとはならなかったものの、Bクレジット側には、同社に対する事情説明の際に知られるに至っており、被告の信用を毀損したものといわざるを得ない。 よって、原告の右不正行為は、被告の就業規則第六六条中の(1)会社の規程に違反した場合及び(5)会社の信用を傷つけた場合に該当するものといえる。 |