ID番号 | : | 06307 |
事件名 | : | 従業員たる地位確認請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 弘南バス事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 組合の支部長又は副支部長の地位にある者が平和義務違反の争議行為に参加したこと、また無許可集会をしたこと等を理由に懲戒解雇され、その効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 労働組合法8条 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動 |
裁判年月日 | : | 1968年12月24日 |
裁判所名 | : | 最高三小 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和39年 (オ) 773 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 民集22巻13号3194頁/時報546号17頁/タイムズ232号292頁/裁判集民93号839頁 |
審級関係 | : | 控訴審/01710/仙台高秋田支/昭39. 4.14/昭和37年(ネ)85号 |
評釈論文 | : | 阿久沢亀夫・法学研究〔慶応大学〕42巻7号104頁/外尾健一・労働判例百選<第三版>〔別冊ジュリスト45号〕250頁/香月不二夫・経営法曹会議編・最高裁労働判例1巻407頁/佐藤昭夫・労働法の判例〔ジュリスト増刊〕153頁/山本博ほか・労働法律旬報716号7頁/清水一行・判例評論126号42頁/川口実・ジュリスト500号476頁/萩沢清彦・最労判批評刑146頁/萩沢清彦・判例タイムズ235号72頁/門田信男・季刊労働法73号120頁 |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕 原判決を通読すれば、原審は、その認定にかかる上告会社主張の解雇理由(2)(無許可集会)および同(4)(その他の秩序紊乱、業務妨害)の行為は、前記就業規則所定の懲戒事由に該当せず、また、同(1)(ビラ等の掲示)および(3)(労働歌等の合唱)の行為は、右の懲戒事由に該当するが、いまだ解雇に値するものとはいえないから、本件懲戒解雇は就業規則二〇九条に違反して無効である、としたものと解される。 そして、原審挙示の証拠によれば、原審の認定は肯認しえないものではなく、右判断は相当として是認しうる。〔中略〕 懲戒解雇は、普通解雇と異なり、譴責、減給、降職、出勤停止等とともに、企業秩序の違反に対し、使用者によつて課せられる一種の制裁罰であると解すべきこと、当裁判所の判例とするところである(昭和三六年(オ)第一二二六号同三八年六月二一日第二小法廷判決、民集一七巻五号七五四頁参照)。そして、平和義務に違反する争議行為は、その平和義務が労働協約に内在するいわゆる相対的平和義務である場合においても、また、いわゆる絶対的平和義務条項に基づく平和義務である場合においても(ちなみに、上告会社主張の争議妥結協定および細目協定は、紛争解決に関する当事者のたんなる心構えの相互確認の域を出るものではなく、いわゆる絶対的平和義務条項ではありえない。)、これに違反する争議行為は、たんなる契約上の債務の不履行であつて、これをもつて、前記判例にいう企業秩序の侵犯にあたるとすることはできず、また、個々の組合員がかかる争議行為に参加することも、労働契約上の債務不履行にすぎないものと解するのが相当である。 したがつて、使用者は、労働者が平和義務に違反する争議行為をし、またはこれに参加したことのみを理由として、当該労働者を懲戒処分に付しえないものといわなければならず、原審の判断は、右とその理由を異にするところがあるが、けつきよく、正当であつて、論旨は採用できない。 |