全 情 報

ID番号 06311
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 株式会社ツバキ・日立工機事件
争点
事案概要  コンビットを使用して金庫室の外壁に防犯用のボードを張る作業をしていた従業員が、使用者から動力源として使用するように指示されていた圧縮酸素にコンビットから出た火花が引火して、コンビットが破裂し腕を負傷したことにつき、使用者を相手として損害賠償を請求した事例。
参照法条 民法415条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1984年6月19日
裁判所名 福岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和56年 (ワ) 507 
裁判結果 一部認容(確定)
出典 時報1125号146頁/タイムズ533号196頁/労働判例442号57頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
 右争いのない事実によれば、被告Y会社は原告の使用者として、原告がコンビットの使用に際しては、その適切な使用方法を指示するなどその使用により原告が負傷することないようその安全を配慮すべき契約上の義務を有していたと認められる。
 そして、右争いのない事実によると、本件事故は、コンビットの動力源として圧縮酸素を用いたことが原因となったもので、しかも、被告Y1会社が圧縮酸素を用いることを指示したというのであるところ、《証拠略》によると、コンビットは、圧縮空気を動力源としてコンクリートに釘を打ち込む機械であって、使用の際には火花が飛散することもあり、その取扱説明書には、動力源としては圧縮空気を用いる旨及び使用時には火花が飛散することがあるので引火しやすいものや爆発しやすいものは遠ざけるべき旨の注意が記載されていることが認められ、一方酸素が支燃性を有し、空気中ではおだやかな燃焼にとどまるものも高濃度の酸素のもとでは激しく燃焼しときには爆発にまで至ることがあることは公知の事実であるから、右のようなコンビットを通常の用法と異なり動力源として圧縮酸素を用いた場合に条件によっては本件事故のような爆発がおこりコンビットを操作している従業員が負傷することがあることは被告Y1会社において予見し得たと認めることができる。従って、被告Y1会社は本件事故につき前記の義務を怠ったというべきである。〔中略〕
 被告Y2会社がコンビットの製造者であることは当事者間に争いがない。ところで、《証拠略》によるとコンビットはコンクリートに釘を打ち込む機械であってその使用方法を誤まればコンビットの使用者ないしは周囲の人間を負傷させるおそれがあるものであることが認められる。したがって、コンビットを販売する商品として製造した被告Y2会社としては、コンビットを購入しこれを使用する者に対し、コンビットの使用により負傷事故が生じることのないようその正しい使用方法等について適確な指示説明ないしは情報提供をなすべき義務を負っていたというべきである。