ID番号 | : | 06316 |
事件名 | : | 費用徴収決定取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 高知労基局長(岡村組)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 林道新設建設工事現場における従業員の転落事故に関連して、会社に重大な過失があったとして労災保険法二五条一項に基づく費用徴収の決定の適法性が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法25条1項 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 事業主からの費用徴収 |
裁判年月日 | : | 1986年2月20日 |
裁判所名 | : | 高知地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和59年 (行ウ) 2 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例470号43頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-事業主からの費用徴収〕 本件事故の現場が墜落のおそれの極めて高い場所であることは前記のとおりであり、本件擁壁の外側型枠の取外しは正に絶壁に乗りかかってする作業であったところ、このような場合における危険防止のための具体的な措置として、労安法二一条二項、労安規則五一八条に被告主張のとおりの規定があるから、原告(現場責任者A)は、その規定に従い、作業床又は防網の設置若しくは安全帯の使用等の墜落防止措置を講ずべき義務があったのであり、その義務を履行することは、事柄の性質上、安全対策の初歩であり基本であったというべきである。 しかるに、前掲証拠によれば、原告(現場責任者A)は、型枠取外しは比較的短時間ですむものであるからそのためにわざわざ作業床又は防網の設置等をするのは無駄であるとして、これを行わず、命綱としてロープを用意していたものの、現場から離れた倉庫に置いたままで、現実には使用していなかったことが認められる(この点につき、原告は、本件工事の注文者である林野庁が命綱の使用を前提として請負代金の見積りをしたと主張するが、(証拠略)によれば、林野庁は、本件工事につき、原告に対し諸法令の遵守を求め、かつ、工事費中にコンクリート擁壁作設に必要な足場等の費用としてコンクリート擁壁足場損料を見込んで積算していることが認められる。)。 また、(証拠略)並びに弁論の全趣旨によれば、原告の施工していた工事の現場では、昭和四九年二月一四日に本件事故と酷似する墜落死亡事故が発生し、同五〇年一〇月七日にもドーザーショベルが転落し運転手が死亡する事故が起ったことが認められるので、原告としては、これらを教訓とし、本件工事については一層の注意をはらい、危害防止義務を尽すべきであったといわなければならない。 そして、本件事故が原告の右義務の不履行に起因していることは、前記の事故状況からして、否定すべくもないというべきである。 右に検討したところよりすれば、本件事故は、原告が安全対策について基本的な義務を履行しなかった過失により惹起されたもので、その過失は重大であり、労災保険法二五条一項二号に該当すると認めるのが相当である |