ID番号 | : | 06332 |
事件名 | : | 退職手当返納命令無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 須崎市長退職金返還事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 依願退職後に、公文書偽造、同行使、詐欺の罪で起訴され執行猶予つきの有罪判決を受けた元市長が、退職金支給条例を改正して新設した退職金返納規定を元市長に遡及適用してなされた退職金返納命令の効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 地方自治法204条 国家公務員退職手当法12条の2第1項 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限 |
裁判年月日 | : | 1992年10月13日 |
裁判所名 | : | 高知地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成3年 (行ウ) 3 |
裁判結果 | : | 認容(確定) |
出典 | : | 労働民例集43巻5・6号1096頁/タイムズ853号127頁/労働判例632号65頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-退職金-懲戒等の際の支給制限〕 本件において、原告が退職する際、市長に関する退職手当返納規程は存在しなかったのみならず、本件処分によって失われる原告の権利は、退職以前における未だ具体化されていない期待権的利益と異なり、既に退職によって具体化し、行使された権利であって、原告の個人的財産そのものに他ならないことに加えて、侵害の程度は、対象となる権利を、ほぼ全面的に失わせるものであることを考慮すると、このような個人の財産を積極的に剥奪する処分についての遡及適用の可否、すなわち、本件条例に基づき、退職手当の支給をしたのちに、右条例を改正し、その適用を遡及させ、あとから、原告の財産権を剥奪することの可否は、刑事上の制裁に準ずるものとして、厳格に解釈する必要があり、前記のような一般的合理性、必要性によって遡及適用することはできないものというべきであって、当事者間に争いのない改正の経緯、他の自治体の状況等を併せて考慮しても、遡及適用を是認するに足る必要性があるとは認められない。 したがって、抗弁1は理由がなく、本件条例の付則は、退職手当の返納規定を、公布日以前の退職の場合に適用する限りにおいて、無効であるという他なく、右付則を根拠とする本件処分には、重大な瑕疵があるというべきである。 |