ID番号 | : | 06340 |
事件名 | : | 教諭の地位確認請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 高知県立高校教諭事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 社会教育機関の職員の職である社会教育主事への異動を命じられた県立高校教員が、本件「転職処分」には重大な違法があるとして、県立高校教員の地位を有することの確認を求めた事例。 |
参照法条 | : | 地方公務員法17条1項 地方教育行政の組織及び運営に関する法律35条 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠 |
裁判年月日 | : | 1993年3月22日 |
裁判所名 | : | 高知地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成4年 (行ウ) 7 |
裁判結果 | : | 棄却(確定) |
出典 | : | 労働民例集44巻2号309頁/労働判例628号23頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕 地教行法三五条によると、地教行法三一条二項に規定する教育機関の職員(職としての社会教育主事を含む)の任免・給与その他身分取扱いに関する事項については地方公務員法が適用され、同法一七条一項においては、職員の任免の方法として採用、昇任、降任又は転任のいずれか一つの方法によることが規定されている。そして、同法八条一項一号、四項の規定に基づき人事記録に関し必要な事項を定めることを目的として制定された人事記録に関する規則四条二項においては、人事異動に関する用語として、転任(職員としての身分を中断することなく、任命権者を異にする他の機関から異動してきた職員を任命する場合をいう)、転職(現に任用されている職員を同一の任命権者のもとで昇任及び降任以外の方法により職名を異にする職に任命する場合をいう)が規定されていることが認められる(乙四)。右規則が地方公務員法に準拠して制定されていることを考慮すると、同規則に規定する「転職」は、地方公務員法一七条一項にいう転任に該当するものと解するのが相当である。 そして、公立学校の教員は地方公務員の身分を有するものであって(同法三条)、地方公務員の外の教育公務員という特殊の身分にある者ではないこと(文部次官通達昭和二四年二月二二日発調第三八号、乙一二)に照らすと、高知県立高校教諭は県教委に任命権がある高知県の地方公務員であり、その点では、本件社会教育主事と同じであるので、教員から本件社会教育主事への異動は、県教委という同一任命権者の下での地位の変更にとどまり、教員の地位は失われるものの、高知県の地方公務員としての身分は失われないものと解される。したがって、本件異動は地方公務員法一七条一項にいう転任(前記規則にいう「転職」)であって、免職には該当しない。 そして、争点(一)で認定したように、本件社会教育主事は単なる職としての社会教育主事であって、社会教育法に規定する専門職としての社会教育主事ではないから、教育公務員特例法の適用はなく、その採用についても同法一六条の規定による教育長の選考による採用という手続きをとる必要はないから、単に地方公務員法上の転任によってのみ、教員から本件社会教育主事へ異動させることができるものと解される。 そうすると、本件異動については、免職及び採用の法的性質を有することを前提にした教員の同意は必要ではないものと解される。〔中略〕 以上によれば、本件転職処分は、事前に原告の意見希望を徴すべき手続きを十分には経ておらず、また、社会教育主事の職務内容について理解させる機会も与えていないものの、処分自体には合理的必要性が認められ、教員の教育要求や現任校の教育計画を著しく妨げるものでもなく、教員に受忍すべき限度を超える生活上の不利益を与えるものでもないということができる。 したがって、本件転職処分は裁量権を著しく逸脱、濫用したものとまでいうことはできず、これに重大かつ明白な違法を認めることはできない。 |