ID番号 | : | 06379 |
事件名 | : | 公務外災害認定処分取消請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 地公災基金高知県支部長(越知中学校)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 授業のほか生徒指導、当直等に当たっていた中学校教諭のくも膜下出血症につき、日常の過激な職務内容が引き起こしたものであり公務起因性があるとして争われた事例。 |
参照法条 | : | 地方公務員災害補償法25条 地方公務員災害補償法45条1項 地方公務員災害補償法51条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等 労災補償・労災保険 / 審査請求・行政訴訟 / 行政処分の存否、義務づけ訴訟等 |
裁判年月日 | : | 1994年7月28日 |
裁判所名 | : | 高松高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成2年 (行コ) 2 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例660号48頁 |
審級関係 | : | 一審/05703/高知地/平 2. 2.22/昭和60年(行ウ)5号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-審査請求・行政訴訟-行政処分の存否、義務づけ訴訟等〕 国家公務員の場合には、国家公務員災害補償法の規定に照らし、公務災害補償請求権は、一定の要件が備われば当然に発生するもので、実施機関による認定は、当該公務員に対する災害補償を簡易迅速に解決するための措置にすぎず、右請求権の存否に何ら法律上の影響を及ぼすものではないと解され、関係当事者に対し実施機関に災害が公務上のものであるとの認定を求める申請権を与えたと解されるような規定も存しないから、公務上外認定に行政処分性はないというべきである。しかしながら、地方公務員の場合には、地方公務員災害補償法二五条二項、四五条一項、五一条、五六条等の規定に照らして、地方公務員災害補償基金が行う認定は行政処分に当たるものと解するのを相当とする。〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕 地方公務員災害補償法の補償の対象となる「公務上の災害(負傷、疾病、障害又は死亡をいう。)」は、公務と相当因果関係をもって生じた災害をいう。右の相当因果関係があるというためには、公務が最も有力な原因であることを要するものではなく、災害の発生につき他に競合する原因があっても、公務が相対的に有力な原因となって当該災害が発生したと認められる関係があれば足りる。そして、公務が相対的に有力な原因であったかどうかは、経験則に照らして、当該公務が当該災害を生じさせる危険があったと認められるかどうかによって判断すべきである。しかるところ、脳出血のような中枢神経及び循環器系の疾病は、素因(脳動静脈奇形、脳動脈瘤等)ないし基礎疾病(動脈硬化、高血圧等)があった場合、公務に起因しない原因のみによっても発症することが多いので、素因ないし基礎疾病を自然的経過を超えて急激に著しく憎悪(ママ)させ得ると医学経験則上認められる負荷が災害発生前にあったことを、公務起因性肯定の判断基準とする考え方があり、控訴人の主張は、これに依るものである。しかし、日常の職務内容自体が質的又は量的に過激なものであったときには、職務内容の特段の変化がないまま発病に至ったとしても、職務が疾病の有力な原因である場合のあり得ることは、医学的にも否定し得ないところであろう。したがって、右のような考え方は、相当因果関係の認定基準としては狭きに失する。そこで、公務上の災害発生直前の職務内容が日常の職務に比べて質的又は量的に過激ではなかったような場合であっても、当該公務の遂行が基礎疾患と共働原因となって災害が発生したと認められるようなときには、特段の事情がない限り、公務起因性を肯定するのが相当である。〔中略〕 本件疾病発症前のAの質的又は量的に過激といえる勤務状態に、前記3(三)のB医師の医学的所見を総合すると、本件疾病発症日には、Aの精神的・肉体的過労が極限に近い状態に達し、それにより一過性の血圧上昇又は血行状態の不安定な変動が起こり、それが脳動脈瘤破裂の原因になったもの、すなわち、本件については、Aの前示公務の遂行が脳動脈瘤の基礎疾患と共働原因となってくも膜下出血が発症したものと推認するのが相当である。これに反する前記3(一)(二)のC医師の所見は、これを採用することができず、他に右推認を妨げるに足りる証拠はない。 そうすると、本件疾病は公務起因性があるというべきである。 |