全 情 報

ID番号 06380
事件名 地位保全等仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 ミリオン運輸事件
争点
事案概要  貨物自動車運送業を営む会社で運転手として勤務していた労働者が、寝過ごしを理由として二度にわたり延着事故を起し、始末書処分を受けた後、組合を通して春闘賃上げ要求をしたことを契機に解雇されたことにつき、右解雇の効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
労働組合法7条1号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
裁判年月日 1994年8月5日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成6年 (ヨ) 1205 
裁判結果 認容,一部却下
出典 労働判例665号47頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
 本件事故は重大であるうえ、債務者は事故後の債権者の態度についても快く思っていなかったことが認められるものの、事故後四か月弱の間に、始末書の提出を求めただけで、それ以上の処分をしておらず、本件の解雇予告の際にも債権者の対応次第では解雇は撤回され得るものであることが明らかにされていることなどから、本件事故と解雇との間に必然性が乏しいばかりか、逆に、債務者のY社長は、債権者との間がぎくしゃくしだしたのは、債権者が組合に加入したからだと考えており、債務者における唯一の組合員である債権者が組合の統一要求書を持参したのが引き金となり、債権者に組合を辞め、以前の債権者に戻ってほしいと考え、組合からの脱退を暗に迫り、債権者が組合を脱退すれば解雇は撤回する旨仄めかしつつ、本件の解雇予告通知を債権者に手渡したことが認められる。これらの事実に照らせば、本件の解雇予告通知は、解雇の撤回と引換えに組合脱退を働きかける目的でなされたものと認めるのが相当である。
 債務者が債権者に対し、本件事故の重大性を認識し、事故後の対応等につき反省を求めることについては理解できないわけではないが、債権者の勤務態度の変化と組合加入とを直接結び付けるのは妥当でなく、まして、組合からの脱退を目的とした解雇予告は不当というほかない。
 したがって、本件解雇予告及びこれに基づく解雇は、解雇権の濫用として無効であると言わざるを得ない。