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ID番号 06396
事件名 従業員地位確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 岩井金属工業事件
争点
事案概要  労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求及び賃金請求を認容した原判決の後、使用者がこれにつき控訴する一方、当該労働者を仮就労として職場に復帰させたが、正社員ではない等として、支払いを命ぜられた額より少ない額を支給している場合につき、控訴審における口頭弁論終結の日の翌日から地位確認請求にかかる判決が確定する日までの分の賃金については、あらかじめその請求をする必要があると認められた事例。
参照法条 労働基準法24条
民事訴訟法(平成8年改正前)226条
体系項目 賃金(民事) / 賃金・退職年金と争訟
裁判年月日 1994年9月27日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (ネ) 2324 
裁判結果 一部却下,一部棄却(確定)
出典 労働民例集45巻5-6号316頁
審級関係 一審/06200/大阪地/平 5. 8.30/平成3年(ワ)4504号
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金・退職年金と争訟〕
 一方、被控訴人らは、同年六月一三日地位確認と賃金、賞与の支払を求める本件訴訟を提起し、平成五年八月三〇日原判決が言い渡されたこと、これに対し、控訴人は、同年九月八日本件控訴を提起し原判決の取消しを求めて争う一方、被控訴人らのうち、被控訴人Y1については就労を引き続き拒否するものの、被控訴人Y2については仮就労として職場に復帰させることとし、被控訴人Y2もこれに応じて、同月上旬から復職したこと、しかしながら、控訴人の就労拒否がなければ被控訴人Y2が得たであろう賃金として月額一八万八〇四六円の支払を原判決が控訴人に仮執行宣言付で命じているにもかかわらず、控訴人は、被控訴人Y2に対し、時間外勤務等が現実に少ない以上、原判決が支払を命じた金員の全額を支払う必要はないとして、一部減額した金員を被控訴人東條に支払っていること、控訴人は、被控訴人Y2との法律関係についても解雇を撤回したものではなく、原判決が未だ確定していない以上、被控訴人Y2を控訴人の正社員として扱うことはできない旨言明していることが認められる。
 以上認定の事実に基づいて考察するに、被控訴人らの賃金、賞与の支払請求中、当審口頭弁論終結日の翌日から本件地位確認等請求にかかる紛争が確定する日までの分については、前記認定の本件訴訟に至る経緯、控訴人の応訴態度に照らし、被控訴人らにおいて予め請求する必要があると認められる。しかし、控訴人が本判決に上告しなかったとき、又は上告しても原判決主文一項が確定したとき以降においても、なお控訴人が右判決に反して被控訴人らに適正な賃金、賞与を支払わない特段の事情があることを認めるに足りる資料はない。そのうえ、被控訴人らが労働契約上受けて来た給与等は、定期的な基本給のほか、時間外手当等の個々の具体的事情によりその支給の有無、金額が変動する性格のものが含まれており(甲六四号証の一ないし七、六六号証の一ないし一五)、これらの将来の金額は現段階で一義的に明確に認定することはできない。