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ID番号 06398
事件名 保全異議申立事件
いわゆる事件名 東洋学園事件
争点
事案概要  専修学校の教師に対する不適格性を理由とする解雇につき、教員としての適格性を否定される程度には至っていないとして、解雇権濫用に当たり無効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 職務能力・技量
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1994年10月17日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成5年 (モ) 52690 
裁判結果 認可
出典 労働判例672号79頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇権の濫用〕
〔解雇-解雇事由-職務能力・技量〕
 債務者が債権者の教師としての不適格の理由として掲げたもののうち、(一)生徒に対する暴行、(二)Aの暴行をことさら強調し、事態を混乱させたこと、(三)答案回収漏れ、(四)交通費の不正取得については一応考慮に値する。
 しかし、すでに検討したように、(一)については常習的なものではなく突発的なものであり、生徒に怪我もなかったこと、(二)については(一)と合わせて債務者内では過去の事例に照らし相応以上ともいえる処分がなされていること、(三)については基本的なミスではあるがケアレスミスであり、それが教師としての適格性に直接的に結びつくとまではいえないこと、(四)についてはこの中では最も教師としての適格性の判断に影響があるものと考えるが、古い事件であり、すでに解決済みのものであるから、これを重要視することは相当でない。
 また、債務者は、これ以外にも、債権者の教師としての不適格性を示すとされる事柄を種々主張するが、主張自体が抽象的なものもあり、具体的事実についてもこれを疎明するに足りる十分な資料は存在しない(債務者は債権者の一部の同僚の陳述書を幾つも提出するが、いずれも個人攻撃の感があって具体的事実を疎明するものとは認めがたい。)。
 以上のとおり、債権者にはいくつかの失敗や欠点が認められるものの、これらが債務者の主張するような矯正することのできない持続性を有する特殊な性向に基づくものとまでは認められず、したがって、右事実をもってしてもなお教員としての適格性を否定される程度にまでは至っていないと言うべきである。すなわち、債権者が「能率または勤務状態が著しく不良で就業に適さない」とまで認めるには足りず、かつ、「その他業務上の都合によりやむをえない事由がある」と認めるにも十分ではない。
 そうすると、本件解雇は解雇の正当事由を欠き、解雇権の濫用にあたる無効なものといわざるを得ない。