ID番号 | : | 06403 |
事件名 | : | 遺族補償給付等に関する処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 仙台労働基準監督署長事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 合宿研修中の早朝ジョギング中にくも膜下出血によって死亡した場合につき、右死亡について業務起因性が認められた事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法7条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等 |
裁判年月日 | : | 1994年10月24日 |
裁判所名 | : | 仙台地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和63年 (行ウ) 4 |
裁判結果 | : | 認容(確定) |
出典 | : | タイムズ881号141頁/労働判例662号55頁/労経速報1557号13頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 山下幸司・労働判例663号6~14頁1995年3月1日 |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕 3 合宿研修三日目の早朝ジョギングについて 鑑定人Aの鑑定結果及び同人証言によれば、ジョギングなどの運動負荷をかける場合には、事前に医学的なチェックを行うとともに、ジョギング中やその後においての脈拍数や身体徴候などによって、身体的負荷が適切であるか否か安全性を確認する必要があること、また、成人男性のエアロビック(有酸素活動)運動としては、一日に一・六キロメートルを一二分間で走行するのが標準的であるとされ、運動習慣のない者がいきなり一、二キロメートルを走ることは、身体的負荷が大きいため危険であり、徐々に右標準に近づけるべきものであることが認められる。 また、ジョギングは、それを行う際の体調いかんによっては、強い身体的負担になることがあることは、経験上明らかである。 そこで、合宿研修三日目のジョギングについて検討すると、ジョギングの走行距離は往復二キロメートルであり、折返し地点で一〇分程度の休憩をとって、片道を七、八分で走るものであったものの、Bの従事していた日常業務にはこれに匹敵するような有酸素活動を伴うものがなく、また、Bには運動習慣もなかったことから、かかる態様のジョギングを行うことは、身体的負担が大きく、危険なものであったと認められる上、Bは、前記認定のとおり、前日までの合宿研修により相当強い身体的、精神的負担を受けていたと認められ、このような態様のジョギングを行うには極めて不適切な身体状況にあったと認められること、また、ジョギングが行われた当時の気温は、一〇・六度と合宿研修期間中で最も下がり、前日の最高気温と比較して約一一度の気温較差があって相対的に寒く感じられ、これによる血圧上昇も考えられること、さらに、脳動脈瘤は、自覚症状がなく、当時の医療技術では、発見が困難な疾患であったことから、Bのみならず、社会一般に存在するかかる疾患保有者において、その破裂を警戒、予防することができず、Bと同様の業務に従事することも社会通念に照らして通常あり得ると考えられることなどの諸事情が認められる。これらの諸事情に加え、「被災者の脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は、発症の直接誘因として、直前の寒冷下でのジョギングが関連し、前日の前兆もジョギングによる身体的負荷がかかわった可能性があると考える。」との鑑定人Aの鑑定結果を総合考慮すれば、合宿研修二日目までの合宿研修業務による疲労が、合宿研修三日目の早朝のジョギングによる身体的負担を著しく高め、かかるジョギングがBにとって過重な身体的負担となり、Bの脳動脈瘤を自然的経過を超えて急激に増悪させ、脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血を発症させたものと認めるのが相当である。 4 以上のとおりであるから、Bの死亡と業務の間には相当因果関係があると認め、業務起因性を肯定するのが相当である。 |