ID番号 | : | 06405 |
事件名 | : | 退職金等請求、損害賠償請求、独立当事者参加、株券引渡請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 三貴、ジェイ・ハウス事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 取締役兼従業員の退職金算定につき、改訂後の「正社員退職金規定」に基づくものとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3の2号 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算 |
裁判年月日 | : | 1994年10月25日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和62年 (ワ) 10207 昭和62年 (ワ) 13916 平成4年 (ワ) 20260 平成6年 (ワ) 5972 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部棄却 |
出典 | : | 労経速報1554号6頁/労働判例669号48頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕 1 請求原因1(一)の事実、同1(二)の事実中、原告Xの退職時の本給が月額八〇万六〇〇〇円であったこと、及び同1(三)の事実中、被告Y1会社が同原告に対し、昭和六一年一二月二二日退職金として金三〇九万四三〇〇円を支払ったことはいずれも原告Xと被告Y1会社間に争いがない。 2 請求原因1の事実中、本件に適用される退職金規定は、原告X主張にかかる退職金規定(〈証拠略〉)か、それとも被告Y1会社主張にかかる正社員退職金規定(〈証拠略〉)のいずれであるか判断する。 証拠(〈証拠略〉、原告X本人(但し、採用しない部分を除く。))によれば、被告Y1会社において、かつて(証拠略)の退職金規定が適用されていたが、昭和五六年二月一〇日の経営委員会において、退職年金制度の新設に伴い一部改訂がなされた旨の報告がなされ、同委員会の了承が得られたが、これには、統括部長として同委員会の構成員である原告Xも同意していること、次いで昭和六〇年八月一日の経営委員会において、退職金規定の一部改訂案が審議され、同委員会の了承が得られたが、これには、統括部長として同委員会の構成員である原告Xも同意しており、右改訂後の退職金規定が正社員退職金規定(〈証拠略〉)として昭和六〇年六月一日より施行されており、昭和六二年一〇月三一日の原告Xの退職に際し、同退職金規定が適用されるべきものであったと認められる。 原告Xは、昭和六〇年八月一日の退職金一部改訂案の稟議書(〈証拠略〉)の形式的不備等を指摘し、同改訂案が経営委員会で審議されたことはない旨主張し、また同原告本人尋問においてそのように供述するが、前記のとおり、同原告主張にかかる退職金規定(〈証拠略〉)は、昭和五六年二月一〇日に一部改訂がなされたことは明らかであり、また昭和六二年一〇月三一日当時、実際に被告会社の正社員に適用されていたのが、被告Y1会社主張にかかる正社員退職金規定(〈証拠略〉)であることを疑わせる証拠はないので、右主張・供述を採用するに足りない。 3 そこで、正社員退職金規定(〈証拠略〉)により、原告Xの退職金を算定すると、同規定三条によれば、退職金計算の基準は退職時における給与(諸手当を含む。但し、時間外勤務手当、休日勤務手当、深夜勤務手当、通勤手当、売上功績金を除く。)とし、これに自己都合退職の場合は、勤続年数に応じ、退職金支給率表のB率を乗じて得た金額を退職金額とする旨定められ、同規定四条によれば、退職金の受給資格は勤続満五年を経過した者とする旨定められ、同規定六条によれば、社命により出向した場合は勤続年数に通算するが、試用期間(就業規則〈証拠略〉四条一項によれば、三か月とされる。)は、通算しない旨、そして勤続年数の計算は一年未満の端数は月割計算とし、一か月未満は切捨てとする旨規定されている。 しかるところ、退職金計算の基準となる退職時の給与については、原告Xの場合、金八〇万六〇〇〇円であることは、当事者間に争いがない。 そこで、勤続年数についてみるに、争いのない事実と証拠(〈証拠・人証略〉)によれば、原告Xは、昭和四一年九月一日に被告Y1会社に入社し、三か月の試用期間を経て、正社員となり、その後、同六一年一〇月三一日に自己都合退職するまで、(甲事件)請求原因に対する認否・主張1(二)のとおり、A会社、被告Y2会社、被告Y1会社の(代表)取締役に就任したことが認められる。しかるところ、被告Y1会社、Y2会社及びA会社は、いわゆるY1会社グループを形成し、被告Y1会社を中心として資本や経営形態を共通にしており、Y2会社及びA会社は、被告Y1会社の地方支社ないし事業の一部門にすぎず、右両会社の(代表)取締役といっても名ばかりのものであり、実質的には被告Y1会社の従業員であると認めるべきであること、被告Y1会社は、原告Xに対し、昭和六一年一二月二二日、退職金として金三〇九万四三〇〇円を支払ったが、同金額の算定に当たり、勤続年数について、入社日である昭和四一年九月一日から退職日である同六一年一〇月三一日まで通算二〇年二か月から試用期間である三か月を除いた一九年一一か月として計算しているものと認められることからすれば、退職金の算定基準となる勤続年数は、一九年一一か月とするのが相当である。 そこで、正社員退職金規定(〈証拠略〉)三条に基づき原告Xの退職金額を計算すると、次の算式のとおり、金三〇九万四三〇〇円(同規定七条により一〇〇円未満切捨て)となる。 八〇万六〇〇〇円×三・六一+八〇万六〇〇〇円×(四・一一-三・八六)×一一÷一二=三〇九万四三六八円 4 そうすると、前記のとおり、被告Y1会社は、右同額の退職金を既に支払済みであるので、同被告に更なる退職金支払義務はない。 |