ID番号 | : | 06411 |
事件名 | : | 賃金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 小暮釦製作所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 賞与の支払い請求につき、具体的な賞与請求権は就業規則等において具体的な支給額又はその算出基準が定められている場合を除き、賞与に関する労使双方の合意によってはじめて発生するとし、本件では右合意はないとされた事例。 賞与の支払い請求につき、賞与額は概ね前年度実績を下回らないという労働慣行はないとして、右請求が却けられた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法89条1項3号の2 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働慣行・労使慣行 賃金(民事) / 賃金の範囲 賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 賞与請求権 |
裁判年月日 | : | 1994年11月15日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成4年 (ワ) 20699 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例666号32頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-賃金の範囲〕 〔賃金-賞与・ボーナス・一時金-賞与請求権〕 賞与は、労働基準法一一条所定の労働の対価としての広義の賃金に該当するものであるが、その対象期間中の企業の営業実績や労働者の能率等諸般の事情により支給の有無及びその額が変動する性質のものであるから、具体的な賞与請求権は、就業規則等において具体的な支給額又はその算出基準が定められている場合を除き、特段の事情がない限り、賞与に関する労使双方の合意によってはじめて発生すると解するのが相当である。 これを本件についてみるに、成立に争いのない(証拠略)によれば、被告の「服務規定」第二七条は、「賞与は、年二回、七月及び十二月に左の通り支給する。但し、支給額は、その勤務成績、勤続年数及び会社の業務成績等により増減することがある。尚、勤続六ケ月未満の者及び前半期の出勤日数が八割に満たない者に対しては減額する。七月・基本給の〇・五ケ月分、十二月・基本給の一ケ月分」と規定していることが認められるところ、右規定が「支給額は、その勤務成績、勤続年数及び会社の業務成績等により増減することがある。」と定めているから、これによって直ちに具体的支給額が算出されるものではない。また、(証拠略)によれば、被告は、原告らが所属する全統一労働組合及び同組合小暮釦製作所分会との間で、平成元年四月八日付「協定書」を作成し、「会社は、会社で働く労働者の雇用、労働条件については、組合と協議、合意してから決定する。」と約定したことが認められるが、被告が右小暮釦製作所分会と平成四年度夏季賞与についてはいまだ妥結をしていないことは当事者間に争いがない。〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働慣行〕 原告らは、被告においては賞与額は概ね前年度実績を下回らない旨の労働慣行が存在すると主張する。 しかし、これを認めるに足りる証拠はなく、かえって弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる(証拠略)によれば、そのような慣行がないことが認められる。そもそも、前叙のとおり、賞与額は、対象期間中の企業の実績や労働者の能率等により支給の有無及び額が変動することが予定されているのであって、前年度実績による賞与請求権が具体化していると解するのは、当事者の合理的意思に反するといわなくてはならないから、原告らの右主張は失当である。 |