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ID番号 06421
事件名 療養補償不支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 天満労働基準監督署長事件
争点
事案概要  初療の日から一二か月を経過した日以降のはり・きゅう施術に関し療養補償給付を不支給とした処分が取り消された事例。
参照法条 労働基準法75条
労働基準法施行規則36条
労働者災害補償保険法1条
労働者災害補償保険法13条2項
体系項目 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 療養補償(給付)
労災補償・労災保険 / 審査請求・行政訴訟 / 国等による支給処分の取消等
裁判年月日 1994年11月30日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成4年 (行コ) 21 
裁判結果 認容(確定)
出典 訟務月報42巻1号179頁/労働判例669号28頁
審級関係 一審/大阪地/平 4. 4.27/昭和60年(行ウ)88号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-療養補償(給付)〕
〔労災補償・労災保険-審査請求・行政訴訟-国による支給処分の取消等〕
 (一) 前項に認定の鍼灸治療の鎮痛効果、鎮痛作用機序の解明、全国的、一般的普及の程度によれば、本件処分当時において、鍼灸治療は、既に、痛みに対する治療の分野において、神経ブロック等のいわゆる西洋医学上の治療方法に比肩し得、これと相補い合うものとして、医学的、社会的に承認され、かつ、全国的に普及し一般化していたものと認めるのが相当である。
 そうすると、三七五通達及び三〇連絡が、一方で神経ブロック等のいわゆる西洋医学上の治療の継続を認めながら、鍼灸治療については、初療の日から原則として九か月(三七五通達の施行日に初療の日から三か月以上を経過している者については、右施行日である昭和五七年七月一日が初療の日から三か月を経過した日とみなされる)、施術効果がなお期待し得るとして延長されても初療の日から一二か月を限度として、労災保険給付の対象となる施術期間を一律に終了させる取扱とする旨定めているのは、合理的根拠を全く欠くものと言わねばならない。
 (二) そして、労災法一三条二項の「政府が必要と認めるものに限る」との規定の趣旨は、労災保険の療養補償給付の範囲に関しては、政府がその当時の一般的医学水準を基準として療養上の相当性についての判断をすべき旨を定めたものと解すべきであることについては、前叙のとおりであるところ、右通達及び連絡の定めるところは、前項に認定の事実に照らし、一般的医学水準を基準とした判断の範囲内のものとは到底認め難いものというべく、労災法の右規定に違反した違法なものと言わねばならない(鍼灸治療が一般に体質絡みの慢性疾患に良く適応するものであって、一年以上の慢性症例に対しても著効ないし有効45%の治療効果があったことは前認定のとおりである)。