ID番号 | : | 06439 |
事件名 | : | 退職功労金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | イオナインタナショナル事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 取締役ではない会社幹部に対し退職慰労金を支払う旨の社長との合意があり、合意に基づく支払いが認容された事例。 取締役ではない会社幹部に対し退職慰労金を支払う旨の社長の方針につき会長も同意しており、また社長は単独で退職慰労金の支払いを合意しうるから、通謀虚偽表示、心裡留保あるいは無権代理には当たらないとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号の2 民法93条 民法94条 民法113条 商法269条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算 賃金(民事) / 退職金 / 退職慰労金 |
裁判年月日 | : | 1995年2月27日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成5年 (ワ) 2006 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部棄却 |
出典 | : | 労経速報1564号10頁/労働判例676号64頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕 〔賃金-退職金-退職慰労金〕 A社長は、退職慰労金に関し、原告X1を除く原告らとの間で、平成四年七月一日から同月三〇日までの間に、原告X2及び同X3に対し、被告会社から各金一〇〇〇万円、A社長の退職金から各金一〇〇〇万円と、平成四年一〇月分ないし一二月分の給与相当額、原告X4に対し、被告会社から金一〇〇〇万円、A社長の退職金から金五〇〇万円と、平成四年一〇月分ないし一二月末分の給与相当額、原告X1との間で、平成四年七月六日頃から同月三〇日までの間に、同原告に対し、被告会社から金一〇〇〇万円、A社長の退職金から金三五〇万円と、平成四年一〇月分ないし同五年三月分の給与相当額の各支払をする旨の合意(本件合意)をなしたものと認めるのが相当である。 しかしながら、右A社長の退職金からの支払分については、A社長が個人的に各原告に対し、支払を約したものであるから、これを被告会社に請求することはできないと解すべきである。〔中略〕 平成四年六月二九日から同年七月一七日までの間に、A社長は、B会長に対し、原告らに支払うべき退職慰労金の金額と、そのうちA社長の退職金からの負担分について告げており、同会長は、これに同意していたと推認するのが相当である。 のみならず、代表取締役は、各自業務執行権を有するのであって、これを内部的に制限するには、定款の規定またはこれに基づく株主総会の決議もしくは取締役会の決議を要するものと解すべきところ、本件において右定款の規定の存在や、これに基づく株主総会ないし取締役会の決議がなされたことの主張・立証はなく、「三代表の見解」なる代表取締役相互間の合意をもって代表取締役各自の有する業務執行権を制限することはできないというべきである。したがってA社長は、単独でも、原告らとの間に退職慰労金の支払に関する交渉をなし、妥結する権限を有していたと認めるべきであるから、原告らが右「三代表の見解」と題する文書の内容を知っていたとしても、A社長と原告らとの間になされた本件合意が通謀虚偽表示あるいは心裡留保により無効となることはないと解するのが相当である。なお、A社長が本件合意をなすに当たり、原告らと結託するなどして、自己や原告らの利益を図ろうとしたとの事実を認めることはできない。 四 無権代理について 三に認定判断したとおり、A社長は、本件合意をなすにつきB会長の同意を得ていたと認められるのみならず、原告らとの間に単独でも本件合意をなす権限を有していたと認めるべきであるから、本件合意が無権代理行為によるものとして無効となることはないと解すべきである。 |