ID番号 | : | 06443 |
事件名 | : | 退職金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 三協事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 退職金に関する就業規則の改訂につき、本件では支給額が減額となるから、不利益となることは明らかであり、したがって、それなりの合理性が必要なところ、従業員の代表者との協議を経ておらず、その効力は生じないとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号の2 労働基準法93条 民法1条3項 |
体系項目 | : | 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 退職金 |
裁判年月日 | : | 1995年3月7日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成5年 (ワ) 19149 |
裁判結果 | : | 認容(確定) |
出典 | : | タイムズ877号194頁/労経速報1564号20頁/労働判例679号78頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-退職金〕 本件退職金支給率改訂の有効性についてはその合理性の有無とその改訂手続の履践の有無との両面から検討しなければならない。 本件退職金支給率改訂は、従業員にとって退職金の支給額が減額となるのであるから、不利益な変更となることは明らかであり、したがって、それなりに合理性を有しなければその効力を有し得ないと解すべきである。 また、本件改訂条項は、被告において本件退職金規定を改訂するには被告に対し従業員の代表者との協議を経るべき義務を負わせているものと解することができる。このことは、従業員に支給する退職金は、その支給率をも含め重要な労働条件の一つであることから、被告においてこれを被告の一存のみによって軽々に改訂することはできず、これを改訂するには常に従業員の代表者との協議によってのみなし得るものとして、それなりに合理性を有するのであり、したがって、右協議を経ることなくなされた改訂は、少なくとも本件のように退職金の支給率を引き下げるという従業員にとって不利益となる面においてはその効力を有しないものと解すべきである。〔中略〕 先ず、本件退職金支給率改訂の理由となった業績悪化をみるに、第三三期(平成四年六月一日から平成五年五月三一日まで)の売上高は約一五一億七一四六万円、営業利益は約一二億三一五二万円、経常利益は約九億五三〇四万円であって、第三一期と比較して売上高は落ち込んでいるものの、営業利益、経常利益とも上廻っており、定年退職者をみても、第三三期で増加することでもなく、退職共済金をみても、第三二期は著増しているが、第三三期は第三一期と比較して減少しているのであって、以上の点からみると、本件退職金支給率改訂に被告が主張するような合理性が存したかは疑問のあるところである。 次に、改訂手続面をみるに、本件退職金支給率改訂は、役員会議、幹部会に諮ったうえでなされているが、このことが本件改訂条項にいう従業員約二一〇名の代表者との協議を経たことになるかは疑問のあるところである。 もっとも、本件退職金規定中には従業員の代表者の選出手続についての規定はなく、他にこれを定めた規定も証拠上見当らないが、幹部会の出席者合計五五名がその構成からみても右従業員の代表者といえるかは疑問のあるところであるからである。 以上のことから本件退職金支給率改訂はその効力を認めることはできない。 |