全 情 報

ID番号 06447
事件名 地位保全等仮処分申立事件
いわゆる事件名 土藤生コンクリート事件
争点
事案概要  整理解雇につき、全員を解雇しなければならない必要性に疑問が残されているだけでなく、組合と十分な協議を尽くしたとはいえず、整理解雇の基準は合理的とはいえず、解雇回避努力も十分とは認めがたいとして、本件整理解雇が無効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の必要性
解雇(民事) / 整理解雇 / 協議説得義務
裁判年月日 1995年3月29日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成6年 (ヨ) 3570 
裁判結果 一部認容,一部却下
出典 労経速報1569号10頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-整理解雇-整理解雇の必要性〕
〔解雇-整理解雇-協議説得義務〕
 債務者代表者は、右一9に判示の団体交渉で、債権者らが運送会社への移行も労働条件の変更も拒否すると明言し、「早く会社が潰れたらよい」とか「何百回交渉しても同じだから止めとこう」などと言って、債権者らが一方的に交渉を打ち切って、取りつくしまもなかった旨、Aから報告を受けたとする。しかし、当時のB労組と債務者との文書によるやりとり(書証略)や債権者らの報告書(書証略)にも照らせば、確かに、債権者らの言動に不適切なものがあった可能性は否定できないが、右債務者の主張するように、債権者らから一方的に交渉を拒否したとの事実は窺えない。
 更に、右事情に照らせば、本件解雇は整理解雇であると解され、債務者の企業運営環境には厳しいものがあり、人件費の削減も課題のひとつであったことは一応認められるものの、本件整理解雇をするに際し、債務者は、企業存続のためにやむをえない解雇者数を真摯に検討して定めたことの疎明はなく、整理解雇の基準としても、単に債権者らに右通告をして、移籍か労働条件切下げに従わない者を解雇とするというに過ぎないことが一応認められる。
 以上によれば、本件解雇は、債権者ら全員の整理解雇の必要性になお疑問の余地が残されているだけでなく、債権者ら(B労組)と十分な協議を尽くしたとはいえず、このような本件状況下においては、右判示の整理解雇の基準は合理的というには足りず、債務者による解雇回避努力も十分とは認めがたいのであって、整理解雇として正当化できず、結局、本件解雇は解雇権の濫用として無効であるといわざるをえない。