全 情 報

ID番号 06450
事件名 退職割増金請求事件
いわゆる事件名 日商岩井事件
争点
事案概要  早期退職優遇制につき、それが本来の退職金の額等に照らして実質的に就業規則の内容をなす退職金そのものである等の特段の事情がない限り、内規定を定めたからといって、それが当然に労働契約の内容になるものではなく、本件では右特段の事情はないとして、優遇制の適用が否定された事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項3号の2
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限
裁判年月日 1995年3月31日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (ワ) 10497 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1564号23頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-退職金-早期退職優遇制度〕
 二 以上を前提に検討する。本件内規による退職割増金支払制度(早期退職優遇制度)は、その制定趣旨からすれば、それが本来の退職金の額等に照らして実質的に就業規則の内容をなす退職金そのものである等の特段の事情のない限り、内規を定めたからといって、それが当然に雇用契約の内容になるものではないと解すべきところ、前記認定の被告の退職金規程により支払われる退職金の額は、世間相場や勤務年数等からして相当な金額であると認められ、他に右特段の事情の存在は窺われない。また、原告が参加した前記ライフプランセミナーにおける被告側の説明内容等に照らすと、これが原告主張のように個々の従業員に対する雇用契約の内容変更の申込みになるとは到底解することはできないばかりか、特に被告会社において原告が被告に多額の損害を発生させたこと(これは、本件内規による人事本部長の審査の際、不承認になる蓋然性の高い事情である)を理由とする懲戒問題が生じていて、懲戒問題の存在は原告自身も知っており、かつ、右セミナー前に被告側から原告に退職割増金が支払われない旨の告知がなされていたとの前記認定によれば、少なくとも原、被告間においては、右セミナーにおける説明が雇用契約の内容変更の申込みであるとする余地はない。更に、本件では、他の時点で右雇用契約の内容が変更されたと認めるに足りる証拠はない。
 三 よって、その余の点について判断するまでもなく、本訴請求は理由がない。