ID番号 | : | 06453 |
事件名 | : | 差押禁止範囲変更決定に対する執行抗告事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本労働者信用基金協会事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 地方公務員共済組合から貸付を受け、未返済の貸付金に担当する金額を給与から控除されている地方公務員が、給与債権を差し押さえられた場合、当該地方公務員から差押禁止範囲がなされたときに民事執行法一五三条一項の「生活の状況その他の事情」としては考慮されないとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法24条1項 民事執行法153条1項 地方公務員等共済組合法115条2項 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 直接払・口座振込・賃金債権の譲渡 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 全額払・相殺 |
裁判年月日 | : | 1995年4月17日 |
裁判所名 | : | 大阪高 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成6年 (ラ) 671 |
裁判結果 | : | 原決定取消,却下 |
出典 | : | 時報1555号63頁/タイムズ893号281頁/金融商事977号20頁 |
審級関係 | : | 一審/大阪地堺支/平 6. 8.12/平成6年(ヲ)478号 |
評釈論文 | : | 宗田親彦・判例評論453〔判例時報1576〕210~215頁1996年11月1日/廣田民生・平成8年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊945〕284~285頁1997年9月 |
判決理由 | : | 〔賃金-賃金の支払い原則-直接払・口座振込・賃金債権の譲渡〕 〔賃金-賃金の支払い原則-全額払〕 地共法一一五条二項の規定は、地方公務員共済組合(以下「組合」という。)の組合員の給与支給機関は、組合員が組合に対して支払うべき掛金以外の金員(以下「償還金」という。)があるときは、給与その他の給与を支給する際、組合員の給料その他の給与からこの金額に相当する金額を控除して、これを組合員に代わって組合に払い込まなければならない旨を規定している。 この規定は、共済制度の趣旨に鑑み、組合が組合員に対して有する貸付金等の債権を組合員から簡便かつ確実に回収し、もって組合の財源を確保する目的で設けられたものであるが、この払込みが他の一般債権に対して優先する旨の規定を欠くこと、「組合員に代わって」組合に払い込まれなければならないという文言に照らしてみれば、この払込みは、給与支給機関が組合に対する組合員の債務の弁済を代行するものにほかならず、組合が、破産手続や民事執行手続において、他の一般債権者に優先して組合員に対する貸付債権等の弁済を受け得ることを規定したものと解することはできないものである。 また、この規定は、地方公務員の給与の直接払の原則及び全額払の原則(地方公務員法二五条二項)の例外をなすところ、組合は、組合員に対し、その給与の額等から無理なく返済できる金額を貸し付けるものであり、給与の直接払・全額払の原則に対する例外として支給前控除を認めても組合員の生活を直ちに圧迫することはないことを前提とするものである。したがって、本件のように組合員が給与の差押えを受け、その差押え額を差し引かれたうえ、さらに地共法の規定による償還金を控除された結果、組合員の生活が圧迫されるような危殆的事態の場合までも想定した規定であることは、到底いうことができない。このような場合、給与の直接払、全額払の原則に戻り、給与支払機関の組合に対する払込義務は当然減免され、組合員は給与支払機関に対して、その生活状況を勘案して、償還金の一部又は全部の控除をしないことを請求し、給与支払者は、その請求に従い、組合員に対し、その生活状況を勘案して、組合に対する償還金の一部又は全部の控除をしないで、給与を支給する、との取扱いをすることが、各種制度の合理的運用並びに関係者相互間の公平に合致するものと解される。 四 したがって、本件において、第三債務者が、本件差押えの対象となっていない給与の額から更に組合に対する償還金を控除して給与を支給していることを、民事執行法一五三条一項の「債務者及び債権者の生活の状況その他の事情」のひとつとして考慮することはできないものであり、これに反して、差押禁止範囲の拡張を認める原決定は取消を免れない。 |