ID番号 | : | 06460 |
事件名 | : | 配転無効等仮処分申立事件 |
いわゆる事件名 | : | 芝実工業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 経営悪化を理由とする配転命令につき、組合との間で定年まで大阪事業所に勤務させる旨の協定が締結されており、また組合と事前の協議をする旨の定めにも違反しているとして、右配転命令が無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働組合法16条 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界 |
裁判年月日 | : | 1995年6月23日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成7年 (ヨ) 1429 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労経速報1571号17頁/労働判例686号80頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕 (一) 使用者は業務上の必要に応じ、その裁量により労働者の勤務場所を決定することができるものであるが、労働契約等により労使間で就労場所が特定されている場合には、その変更には、従業員の同意を必要とする。 また、使用者は、労働者に対する指揮命令権に基づき配転命令をすることができるとしてもこれを濫用することが許されないことはいうまでもなく、当該配転命令につき業務上の必要性が存在しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該配転命令が他の不当な動機、目的をもってなされたものであるとき、若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるときなど特段の事情の存する場合は権利濫用として無効になるというべきである(参照、最高裁昭和六一年七月一四日第二小法廷判決、判例時報一一九八号一四九ページ)。 (二) この点本件についてみるに、債務者は、平成五年三月二六日付で、本件組合との間で、大阪事業所の縮小に伴い、同事業所を縮小して存続させて、当時大阪事業所に勤務する債権者らを含む四名の従業員が定年退職するまで存続させることを合意する旨の協定をしており、債務者は、債権者らとの間で、勤務場所の特定がなされているのであるから、債権者らの同意がないかぎり、就労場所を変更することはできない。 債務者は、平成七年二月二三日債権者らとの間で、大阪事業所の閉鎖と本社工場への配転の合意をしたものであり、右合意に基づき債務者は、債権者らに対し本件配転命令を行った旨主張する。 しかしながら、前記1の事実によれば、債権者らは、債務者代表者らから不良品発生について一方的に罵倒され、叱責を受けたものであり、債権者A及びBは、悔しさのあまり泣き出す状況であり、加えて女性で老齢であり、BやCの見幕にあがらうことができず、いわれるままに謝罪し、反論を加えることはなかったものである。むしろ、債務者が債権者らに対し、一方的に大量の不良品生産を理由に極めて不利な状況下で暗に配転を求めたものであると認めるのが相当である。また、(証拠略)によれば、債務者においては昭和五〇年二月三日付協定書により組合員の配置転換等について事前に組合と協議し、組合の同意を得た後に施行する旨協定している。しかるに、債務者は、債権者らに対する本社工場への配置転換について、本件組合との事前協議をしていないことは明らかである。このような債権者らのこれまでの大阪事業所閉鎖に対する態度及び平成七年二月二三日の債権者らを巡る環境からすれば、債権者らと債務者との間で大阪事業所を閉鎖して本社工場で勤務するという合意がなされたものであるとは認められない。 (三) なお、債務者は、債権者らが、本件配転を認める旨の合意をなした旨の主張に沿う疎明資料を提出しているが、これまで債権者らが債務者の本社工場への配転の申出を通勤が困難であることを理由に許否していたことは債務者も認めているとおりであり、債権者Cは、平成七年三月二二日債務者の本社会議室において債務者からの本社工場への配転の指摘にかかわらず、本社工場への配転について同意していない旨述べていること、債権者らの本件における審尋での態度、債務者が主張するように、仮に債権者らが、平成七年二月二三日に本件配転命令に対し予め同意しているものであるならば、債務者が同年三月二二日に再度債権者らに対し、右合意の確認をする必要はなく、不良品が発生したとする同日に配転命令を行ってしかるべきなのに、実際は同年五月一八日付で債権者らに対し、本件配転命令を行ったものであることからすると、右疎明資料のうち債権者らが、配転命令について明確に回答した旨の記載部分は信用することができない。 (四) 債権者らは、債務者との間で平成七年二月二三日に、配転についての同意をしたとは認められないから、債務者の本件配転命令は、労働契約に反した無効なものであり、債権者らには、被保全権利が一応認められる。 |