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ID番号 06465
事件名 賃金請求控訴事件
いわゆる事件名 日本中央競馬会事件
争点
事案概要  競馬の勝馬投票券発売所に勤務する短期労働契約者の年休につき、一ないし二か月の未在籍期があっても、法令による競馬開催日の関係で生じたことであり、その発生要件である「継続勤務」性を失うものではないとされた事例。
参照法条 労働基準法39条1項
体系項目 年休(民事) / 年休の成立要件 / 継続勤務
裁判年月日 1995年7月12日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (レ) 71 
裁判結果 取消(上告)
出典 時報1536号111頁/タイムズ887号203頁/労経速報1574号3頁/労働判例679号38頁
審級関係 一審/立川簡/平 6. 3.24/平成3年(ハ)169号
評釈論文 森井利和・労働法律旬報1373号29~41頁1995年12月10日
判決理由 〔年休-年休の成立要件-継続勤務〕
 右(一)ないし(六)の認定事実及び前記争いのない事実等並びに前記一の認定事実によると、控訴人は昭和五六年ないし平成三年四月一四日までの間、毎年それぞれ一か月ないし二か月を超える被控訴人への未在籍期間が存するものの、右期間は東京及び中山競馬が開催されていない時期であって、右以外の時期の在籍状況は、一開催期間又は連続する二開催期間である約二〇日ないし約五〇日程度の在籍期間と、約五日程度の在籍していない期間を繰り返した結果、毎月概ね四日ないし一〇日の勤務日が存する状況で、東京及び中山競馬についてはすべて勤務日となっていること、各競馬開催期間における労働条件がほぼ同一であり、開催従事員において次回不就労の意思を表示しない限り、格別の不都合がなければ被控訴人において当該開催従事員を次回開催時にもそのまま就労させ、これが被控訴人の競馬開催業務の運営にとって望ましいものとされ、原則として右に記載した採用方法で六〇歳又は六五歳まで採用が継続されること、給与制度(日給、特別手当、慰労金)が継続勤務する従事員を優遇する仕組みになっていること等競馬開催期間を単位とした各雇用契約が直前の競馬開催期間での就労を前提として反復締結されていたものとみるべき状況にあり、法令上の制約に基づき一年間のうち夏季二か月前後の期間について競馬不開催のための空白期間があるに過ぎず、業務の開催がその性質上不可能なものであるとはいえないのであって、実態としての雇用関係が同一性を維持して継続していたものということができる。〔中略〕
 (二) 被控訴人が主張し、基収一四〇号が示すように、一般的には一か月に一日の勤務日もない労働者については、実質的にも継続勤務に該当しないと判断される場合が多いとしても、右認定事実によれば、控訴人などの関東地区の開催従事員に夏季の勤務日がないのは、各人の希望によるのではなく、競馬開催を規制する法令によってその開催回数等が細かく定められ、年間を通じて東京競馬又は中山競馬を開催することが現行法令上不可能であることが理由であり、また、右開催従事員は、右両競馬が開催されない夏季に開催される新潟競馬又は福島競馬に勤務を希望しても、人数制限のために勤務できない場合があり、夏季に同日数勤務した者も、勤務した競馬の開催日によって、年間を通じて一か月に一日以上の勤務日を得るか否かが異なってくるのであるから、これらの特殊事情を有する控訴人などの関東地区の開催従事員について、一か月に一日以上の勤務日が存するか否かという形式的基準のみで一津に判断することは、右勤務の実態に沿うものではなく、また、右従事員間の均衡を欠き相当ではないというべきであり、単に一か月に一日の勤務日がないことを理由とする被控訴人の右主張は採用することができない。
 4 以上によれば、控訴人において、法三九条一項の適用上、少なくとも昭和五六年以降平成三年四月一四日まで、実質的に労働者としての勤務関係が継続しているものと認めるのが相当である。