ID番号 | : | 06471 |
事件名 | : | 配転命令効力停止金員支払等仮処分申立事件 |
いわゆる事件名 | : | 東海旅客鉄道事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 争議行為中に運転手が車発機を持ち帰ったため、右行為を理由に配転を行なったとする主張につき、業務上の必要性が認められず人事権の濫用に当たるとして無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法1条3項 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用 |
裁判年月日 | : | 1994年12月26日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成5年 (ヨ) 2707 |
裁判結果 | : | 認容,一部却下 |
出典 | : | 労経速報1558号14頁/労働判例672号30頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕 債権者の車発機持ち帰り行為は争議行為という非日常的な機会に発生したものであり、そもそも債務者が受領拒否により正規の仕業を中途で打ち切るという変則的形態を採ったことが原因となっており、その当否については組合側と会社側との見解が分かれるのは当然で、債権者が一方の論理を主張することはある意味ではやむを得ないことである。 債務者は、運転士としての適格性のための再教育を行った旨主張するが、その実態は教育というには些か心もとなく、債権者を長期間にわたり一室に閉じ込め、反省文を書かせることが目的だったと思われても仕方がないような内容であり、債務者のかかる対応が債権者を一層頑にさせたとも考えられなくもない。 先にも認定したとおり、債権者は、これまでに管理者の指示に反抗したり、業務上問題を起こしたりしたことがないうえ、今回の件についても、最後には管理者の指示に従わなかった点については反省しているのであるから、今後とも職場規律違反を生じさせる蓋然性を認めるに足りる疎明はない。 3 また、債務者は、債権者が平成四年度に過剰金、不足金の誤扱いの件数が一〇件あり、うち不足金八件が大阪運転所でのワーストワンであるとして、現金管理業務の適格性に欠けるかのように主張するが、疎明資料(〈証拠略〉)によれば、確かに債務者の主張事実が一応認められるものの、その金額、件数とも他の者に比較して著しく多いというほどではなく、これをもって現金管理業務の適格性に欠けるとまでは認められない。 4 さらに、疎明資料(〈証拠略〉)によれば、これまで債務者大阪運転所において、新幹線運転士不適として他に配置転換した例が九例あるものの、そのうちの多くは身体的故障による医学的適正を理由とするもので、他の一例は業務中の不正行為を理由とするものであることが窺えることから、これらの事例に照らしても、本件においては業務上の必要性が希薄と認めざるを得ない。 5 以上の結果を総合すれば、債権者が新幹線運転士としての適格性に欠けるものと断定することはできず、本件の配置転換には業務上の必要性が認められないから(仮に債務者に相当広い配転権についての裁量権を認め、業務上の必要性を肯定したとしても、本件配転には債権者が業務命令に従わなかったばかりかその後も自己の主張に固執することに対する報復的要素が存在することは否定できず、かつ、長年新幹線に乗務してきた債権者から一方的にその機会を奪うことになるという債権者への影響をも考慮するときは)、本件命令は、人事権の濫用として、無効であるといわざるを得ない。 |