ID番号 | : | 06473 |
事件名 | : | 賃金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 山陽新聞社事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 労働組合員である新聞社社員が、小豆島通信員から本社編集局校閲部への配転命令を拒否し着任しなかったため、就業規則に基づき解雇されたので、解雇の無効を主張して賃金等の支払を請求した事例(原告は解雇通告の翌年に定年退職)。(請求一部認容) |
参照法条 | : | 民法1条3項 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇の自由 |
裁判年月日 | : | 1973年7月19日 |
裁判所名 | : | 岡山地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和40年 (ワ) 236 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 労働民例集24巻4・5合併号414頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 秋田成就・ジュリスト581号124頁 |
判決理由 | : | 原告は被告会社の責に帰すべき事由によって原告が他の従業員よりも不利益な取扱を受けるのは公平の原則に反するところであり、原告が平均以上の勤務成績をあげている場合には、被告会社は、その査定がなくとも組合員の平均本給額に対する平均調整金の比率を原告の本給額に乗じて得た金額を調整金として原告に支払うべき義務があると解するのが合理的であると主張するが、労働協約、就業規則等に昇給の可否、金額等の決定について使用者に裁量の余地がほとんどない程度に詳細かつ明確な基準が定められているため機械的に算定しうるような場合ならばあえて使用者の形式的な査定の有無を問うまでもなくかかる方法で算定された金額につき賃金債権として認める余地があるとしても、前記認定のような抽象的な基準の下においては被告会社の査定という意思表示があつて初めて賃金額につき雇用契約の内容が変更されることとなる面を無視し去ることはできず、結局定期昇給分については被告会社の査定がなされない限り賃金債権の成立を認めることはできない。 しかし前記三(一)4(8)、四(一)において認定の諸事情を総合するならば、原告は前記昇給の可否、金額を決定する基準に従い少なくとも欠勤控除後の標準調整金を受けることのできる具体的にして確実な期待を有したということができ、しかもかかる期待は十分法的な保護に値いすると解されるところ、既に検討したように被告会社が原告を違法に配転したうえ解雇した結果原告に対しなすべき義務を負っている査定を行なわなかった結果、原告は右期待を侵害されたというべきであるから、被告会社は原告がこのために受けた前記標準調整金相当額の損害を賠償する義務がある。 (中 略) 原告は一時金支給の場合にも賃金引き上げの場合と同様平均本給額に対する平均調整金の比率を原告の本給額に乗じて算出した金額を調整金として支払う義務があると主張するのであるが、既に検討したように被告会社の査定がなされない限り賃金債権の成立を認めることはできない。しかし前同様の理由で被告会社は査定を行なわないことにより原告の有した欠勤控除後の標準調整金に対する期待を侵害したといえるから、右標準調整金相当額の損害を賠償する義務がある。 |