ID番号 | : | 06477 |
事件名 | : | 損害賠償等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本ユニカー事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 被解雇者および外部の支援者が団交申し入れと称して守衛の阻止を無視して会社構内に押し入ったため、守衛が実力をもって排除しようとしてその際殴打、引き倒し等の行為に出たことにより負傷したことにつき、右被解雇者等が不法行為に基づく慰謝料等を請求した事件。 |
参照法条 | : | 民法709条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償 |
裁判年月日 | : | 1975年12月15日 |
裁判所名 | : | 横浜地川崎支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和49年 (ワ) 123 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 時報809号99頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕 交渉団が不法に入構し、座り込み、あるいはアジ演説をして気勢を挙げることが、工業所の秩序と平穏とを害し、工業所の業務を妨げるものであることはいうまでもない。現に、《証拠略》によれば、交渉団が入構していた約一時間五〇分の間、朝の出勤バスは正門から入ることができないで裏門から入らざるをえず、また、各門が閉鎖されたため、被告会社の出荷関係のトラック及び取引業者の車などで南門が非常に混雑したことが認められるのである。そして、かような被告会社の損害は、交渉団が入構している限り増大するのであるから、被告会社が速やかにその損害を防止するため、自ら守衛の手によって交渉団を構外へ排除する必要のあったことは当然である。守衛らは、右排除の基本的な方法として交渉団のうちから一人ずつを構外へ連れ出すこととしたのであるが、双方の人数などを考慮すると、相当な方法であったということができる。この場合、交渉団は、座り込んでおり、一人ずつ引き出されないようスクラムを組み、互につかまり合っているのであるから、守衛としては、相手の手足をつかんでかなり強く引っ張らざるをえないし、守衛が引っ張るところを交渉団の者が、全身でのしかかったり、引き戻そうとすれば、守衛も一属強く引っ張ることになり、引きずる結果になることもある。これらは、排除とこれに対する抵抗の関係から当然の成行といいうる。また、被解雇者である原告Xらが交渉団の先頭に立つ形でアジ演説をしているのであるから、守衛がそのマイクロフォンを取り上げようとしたり、手を叩いたり、足をすくって引き倒す行為に及んでも、それは、少しでも早く構内の秩序と平穏とを回復するためのものと解され、当時の緊迫した雰囲気からみれば無理からぬところである。相手が前の者のバンドをつかんではなさないとき、排除の手段として、その手をはなさせるため、拇指を強くつかんで逆に反らす行為も、排除が急を要することなどから、右と同様に評価することができる。もみ合いになった場合、顔面を叩いたり、髪を引っ張ったりすることも、前認定の程度のものはやむをえないものがある。これを要するに、前記三に認定した守衛らの有形力の行使は、すべてやむをえないものであったといわざるをえないのである。また、前認定の、原告らが受けた身体傷害及び着衣の損傷も、交渉団が行った抵抗の態様及び程度などとあわせ考えるときは、これをもって、直ちに、守衛らの行為が必要の程度を越えたものとする理由とすることはできない。以上のことは、守衛らが、当初四人を排除した後、二度目の排除にかかってからは、ついに一人も排除することができなかったことからも首肯することができるであろう。 3 被告の抗弁は理由がある。守衛らの行為は不法行為を構成しない。 五、以上説示したとおりであるから、原告らの損害賠償請求は、その余の点につき判断するまでもなく理由がない。 |