ID番号 | : | 06488 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 三六木工事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 立木の売買、製材および木材の加工販売等を行う会社にトラック運転手として雇われていた労働者が、チップ原材を大型トラックに積込み作業中に玉掛けに使用していたワイヤーロープの一方の環状部分が解けて原木が落下したことにより被った損害につき総額で一億八七〇〇万円余の賠償を請求した事例。 |
参照法条 | : | 民法415条 労働者災害補償保険法12条の8 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 労災保険と損害賠償 |
裁判年月日 | : | 1994年9月27日 |
裁判所名 | : | 横浜地小田原支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成4年 (ワ) 73 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部棄却 |
出典 | : | タイムズ895号125頁/労働判例681号81頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕 被告会社は、原告Xとの雇用契約に基づき、その労働提供過程において、原告Xの生命、身体、健康等に危害が及ばないようその安全に配慮する義務を負っているところ、その安全配慮義務を怠り、玉掛けに使用してはならない台付け用の本件ワイヤーロープを玉掛けに使用し、安全荷重を上回る本件原木の吊り上げ作業を行わせたため、本件ワイヤーロープのアイの編み込み部分が本件原木の荷重に耐えきれずに解けた結果、本件事故が発生したものであるから、被告会社には、債務不履行の規定に基づき、本件事故によって生じた損害を賠償する責任があり、また、被告Yは、被告会社の代表者であり、本件事故当時、原木の積み込み作業の指揮、監督をしていた者として、被告会社に右安全配慮義務を尽くさせるよう注意すべき義務があるのに、これを怠った結果本件事故が発生したものであるから、被告Yには、不法行為の規定に基づき、本件事故によって生じた損害を賠償する責任がある。 三 過失相殺の抗弁について 本件事故が玉掛けに使用してはならない台付け用ワイヤーロープを玉掛けに使用し、安全荷重を超える本件原木を吊り上げたため、アイの編み込み部分が荷重に耐えきれずに解けた結果発生したものであることは前記のとおりであり、原告Xは本件原木の玉掛け作業をしていないし、原告Xのクレーンの運転操作に事故の原因があったわけではないから、原告Xに本件事故の発生について過失があったと認めることはできない。 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-労災保険と損害賠償〕 安全配慮義務違反あるいは不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し、加害者にこれを賠償させることにより、被害者が蒙った不利益を補てんして、安全配慮義務違反あるいは不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであるから、被害者が労災保険等から補償を受けることとなった場合であっても、損害額から控除すべき範囲は、被害者に生じた損害が現実に補てんされたということができる範囲に限られるべきであり、右の観点からすると、将来支給されることが予定されている労災保険金を控除するのは相当でなく、既に支給された労災保険金のほかには、支給されることが確定した金額についてのみ控除するのが相当であるが、本件においては、右確定した金額を認定するに足りる証拠がないから、これを控除することはできない。 (3) 前記の損害額の合計一億六五六四万九三五一円から右損害のてん補額を控除すると、残損害額は一億四七五四万七八二九円となる。 |