ID番号 | : | 06492 |
事件名 | : | 損害賠償等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | ネスレ事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 即席飲料の製造販売を業とする会社で勤務していた女性従業員二名が配転を命じられ、右配転命令を不当労働行為であるとして、右命令に基づく勤務をする義務がないことの確認と、右配転命令拒否を理由として上司から嫌がらせを受けたとして損害賠償を請求した事例。 |
参照法条 | : | 民法709条 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠 |
裁判年月日 | : | 1994年11月4日 |
裁判所名 | : | 神戸地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和59年 (ワ) 706 |
裁判結果 | : | 一部認容(控訴) |
出典 | : | タイムズ886号224頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕 (二)(1) 配転命令を発するに際し、使用者が、労働者と話合いの機会を設け、意向を打診したり、説得を試みたりすること自体は、適法なものであることは論を待たないところであり、社会通念上、意向打診、説得として妥当な範囲にとどまるかぎり、不法行為を構成する余地はなく、また、使用者が、労働者に対し、いかなる業務を担当させるかについては裁量が認められ、業務上の必要性等正当な理由に基づき、一時的に業務の指示をしない措置をとることも、雇用契約当事者間の信義則に照らし、合理的な範囲にとどまるかぎりは、裁量の範囲内の行為として、適法であると解すべきである。 しかし、他方、労働者が配転の必要性について理解を示さないからといって、翻意を促すための手段として、使用者において、労働者に対し、意向打診、説得の範囲を超えて、嫌がらせ等の行為をすることは許されるものではなく、また、労働者は、労働契約上の地位に基づき、勤労を通じ自己を実現していく権利を有することも論を待たないところであるから、業務の指示をしない措置が、不法な動機に基づき、又は相当な理由もなく、雇用関係の継続に疑問を差し挟ませる程度に長期にわたる場合等、信義則に照らし合理的な裁量を逸脱したものと認められる場合は、違法性を帯び、不法行為を構成するものと解せられる。〔中略〕 (三) 以上のとおり、被告の原告Xに対する昭和五七年一〇月一日以降明石出張所への赴任に至る昭和五八年九月四日まで一年近くにわたる本件仕事取上げ及び本件嫌がらせは、同原告に対する加害の意図をもってなされ、合理的な裁量の範囲を逸脱していることが明らかであるから、不法行為を構成するものというべきである。 よって、この点に関する原告Xの主張は理由があり、本件仕事取上げ及び本件嫌がらせによって同原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料としては、前記認定の事実関係に照らせば、金六〇万円と認めるのが相当である。 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕 本件配転命令(二)に関するかぎりは、それ自体は、業務上の必要性に基づくものであり、また、原告Xに対しても不当な不利益を与えるものとは認められず、合理性を有するものと解されることもまた前述のとおりである。〔中略〕 (六) 以上のとおりだから、本件配転命令(二)が無効であるとの原告Xの主張にはいずれも理由がない。 |