全 情 報

ID番号 06496
事件名 地位保全等仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 関西主婦会館事件
争点
事案概要  当初「A主婦会館」が所有する建物に事務所を置き活動していた「A主婦連」の前会長の個人的秘書をやっており、後にA主婦会館の事務所で就労することになり、会館の掃除や利用者への応対などをやっていた者がA主婦会館から雇用関係を否認され就労を拒否されたとして、地位保全の仮処分を申し立てた事例。
参照法条 民法623条
労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 成立
裁判年月日 1994年12月26日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成6年 (ヨ) 2560 
裁判結果 却下
出典 労働判例672号38頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-成立〕
 債務者が現実に行っていた事業は、主として貸室業務であって、その主たる事務所である会館の貸室を第三者とA主婦連に貸している以外は特別人手を要する事業をしていたものでなく、会館は専ら、A主婦連の活動の場所として利用されていたものであり、債権者を雇用する当時、既に申立外Bら二名の者が、債務者の業務やA主婦連の事務処理のために従事しており、特に債務者の業務のために債権者を雇用する必要がなかったものであり、債権者は申立外Cのはからいで、A主婦連の活動に従事するために専従職員として雇用されたものであり、この為債権者自身はもとより、債務者、A主婦連の各関係者は、債権者の雇用者はA主婦連であると認識していたものであり、債権者の主たる仕事も、専らA主婦連の活動のためのものであることからすると、債権者はA主婦連と雇用関係を有するも、債務者との間に雇用契約が存するとは認められないものである。
 3 債権者は、健康保険につき債務者が事業所とされていることや、会館の第三者に貸した貸室の清掃、整理や応対、その他建物の清掃や来客等の応対等に従事したことをもって、債務者との雇用関係の存在を主張するが、健康保険については、その当時の債務者やA主婦連の関係者が、A主婦連は健康保険法第一三条一項の事業所に該当しないものと認識していたことから、債権者に健康保険の被保険者たる資格を得させ健康保険を利用させるために、便宜上健康保険の関係でのみ、債務者名義を利用して事業主として届けられ処理されたものであり、債権者もこの便宜的な取扱に同意していたものであると推認されること、又第三者に貸した貸室、トイレ、その他のフロアー等の清掃、整理や利用者の応対は、一応債務者の業務に属するものといえるが、これとて前記のとおり会館の利用は専らA主婦連が利用していたことからすると、その清掃、整理や来客の応対等もA主婦連の業務である側面を有するといえるものであり、又その仕事は債権者の仕事の中心部分でなく、付随的部分であったと認められるものであるから、この事実をもって債務者との雇用関係があった根拠とすることはできない。