ID番号 | : | 06497 |
事件名 | : | 賃金仮払仮処分申立事件 |
いわゆる事件名 | : | 少年新聞社(第一・第二)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 全国の幼稚園・保育園・小中高校などを対象に写真ニュースを発行する会社で編集・写真撮影等の業務に従事していた従業員が、営業部への配置転換を命じられ、その効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用 |
裁判年月日 | : | 1995年1月26日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成6年 (ヨ) 21180 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部却下 |
出典 | : | 労働判例676号84頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕 右債権者らのいう職種は、編集(債権者によってはコンピュータを使用する編集)、写真撮影であり、特殊な資格や能力を必要とするものではなく、社内での訓練、指導による業務の遂行が十分可能であること、債務者は、従業員五〇ないし六〇名程度(役員及び役員候補を除く。)の小規模な会社であること、債務者は、直販制を基礎としており、その点においては営業活動と取材編集とが相互に関連性を有することが一応認められるのであり、これらのことに照らすと、右債権者らの雇用契約が明示又は黙示に職種が限定された契約であるとすることはできない。もっとも、疎明資料によると、右債権者らを募集した新聞広告、学校等への求人票には一定の職種が記載されていることが認められるが、そのことから、債務者との間でその内容のとおり職種を限定した雇用契約が成立したとすることは無理である。 したがって、職種限定契約を前提として本件異動命令が無効であるとする主張は理由がない。 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕 本件異動命令による編集スタッフの減員により、刊行物は局出日の遅れが生じ、その紙面の質的低下を招くなどの混乱が生じているにもかかわらず、債務者は、編集の外注を継続し、新規の従業員を募集、採用しているのであり、債務者の経営悪化及び写真ニュースの購買部数停滞についての前記のような原因や、債務者の意図する営業活動の計画、分担、具体的内容等が明らかでないことをも併せ考えると、本件異動命令が経営改善のための写真ニュースの販売拡張策として業務上の必要性があるとはいいがたいし、雇用確保の目的があるとも考えられない。他方、債権者AないしBは、前記のとおり職種が限定された雇用契約を締結したとはいえないが、疎明資料によると、基本的には編集業務に就くことを希望していることが認められるところ、本件異動命令に従うことになれば、その希望に反する結果となるだけでなく、編集部員としてこれまでに得た技術、経験を直接活かすことができなくなる。また、営業本社新営業部勤務となる者に対しては営業実働手当、拡張営業手当が支給されるものの、職責手当が支給されないこととなり、疎明資料によると、このことが個々の者にとって従来よりも不利益になるとは断定できないが、その可能性があることも否定できない(債務者も債権者一名を含む二名の者については拡張営業手当が支給されない場合、賃金が減額になることを自認している。)。このような事情や本件異動命令発令の経緯等を総合考慮すると、本件異動命令は、債務者のいうように営業部門の強化と余剰人員の雇用確保を目的とする人事異動であるとみることはできず、組合活動に対する報復など業務上の必要性とは別の動機、目的によりなされたことを窺わせるのであり、全体として業務上の合理的な必要性を欠き、権利の濫用に当たるといわなければならない。したがって、右債権者らに対する本件異動命令は無効というべきである。 |