全 情 報

ID番号 06506
事件名 退職金請求事件
いわゆる事件名 黒川紀章建築都市設計事務所事件
争点
事案概要  取締役に就任していた者が退職して支給された退職金が、退職手当金規定に従った金額よりも低額であったとして、その差額を請求した事例。
参照法条 労働基準法11条
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 退職慰労金
裁判年月日 1995年2月28日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (ワ) 195 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1576号18頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-退職金-退職慰労金〕
 被告は原告に対し、原告の右退任に当たり役員として就労したことに対する退職金を支給することとしたが、被告には役員に対する退職金の支給基準を定めた規定等は存在していなかった。しかし、被告は、被告における過去の役員に支給した金額、一般社員に支給する前記退職手当金規定等を参酌して裁量により前記退職金額(但し、従業員に支給される退職金とは異なり名目上退職金と称したに過ぎない)を決定し、これを支給した。〔中略〕
 被告の退職手当金規定は被告との間に雇用契約関係にある従業員を対象に定められたものであり、役員には適用ないし準用はなく、役員に対しては、過去の事例、一般従業員に支給する退職金額等を参酌して裁量により決定し、これを退職金名目で支給してきたのである(人証略)。
 原告は、株式会社Aから被告の役員に就任するに際し、被告の経理担当の従業員Bから社長は原告の退職金につき被告における勤務期間をも通算して支給するので、今は支給しない旨述べていたと聞かされた旨の供述をするが、この供述は、前掲各証拠と対比してにわかには信用できない。
 なお、原告が被告との間に雇用契約関係にあった右参与の期間につき退職手当金規定を適用すべきであったとしても、同規定上支給率は〇・五である(書証略)から、被告が原告に支給した前記退職金額よりははるかに低額となることは明らかである。