全 情 報

ID番号 06518
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 呉中央水産事件
争点
事案概要  組合委員長が、会社が通告してきた営業手当の廃止についてこれを非難する公開質問状を会社および若干の関連団体に交付したことにつき、右公開質問状の配布が企業の信用を失墜させたとして解雇され、その効力を争って地位保全の仮処分を申請した事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
労働組合法7条1号
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 名誉・信用失墜
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1995年4月6日
裁判所名 広島地呉支
裁判形式 決定
事件番号 平成6年 (ヨ) 43 
裁判結果 一部認容,一部却下
出典 労働判例679号52頁/労経速報1583号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-名誉・信用失墜〕
 右1(一)ないし(五)の事実によれば、債務者は、組合執行委員長である債権者を差別して取り扱う意思のもとに本件解雇を行ったとはいえず、債権者が、個人的に、債務者の信用を失墜させ、損害を与えようとする目的で本件質問状の作成、配付行為を行ったことを理由にして本件解雇を行ったものと認められる(後記二のとおり、客観的にみれば、本件質問状の作成、配付行為を債権者の個人的な故意による信用失墜行為と見ることの妥当性については疑問があるが、右認定判断を左右するものではない。)。したがって、本件解雇が債権者主張の不当労働行為に当たるということはできない。
〔解雇-解雇権の濫用〕
 以上によれば、債権者が本件質問状を作成、配付したことにつき非難されるべき点があるにしても、客観的に見ると、債権者が、組合活動とは関係なく、個人的に債務者の信用失墜をもくろんで本件質問状を作成、配付したと見ることの妥当性については疑問がありまた、本件質問状により債務者が受けた不利益と本件解雇によって債権者が受ける不利益等を総合勘案すると、債権者の右行為に対し企業から放逐する本件解雇をもってのぞむのは、客観的、合理的理由を欠き、権利濫用に当たるといわなければならない。